逆転(BL)
じゃ、食べようか(響王)

久しぶりにオデコくんに会った。会ったのはいいけど、顔の半分が白いヤツに覆われている。これじゃあ、会ったとは言えない。

「…どうしたの、オデコくん」

風邪というほど体調が悪いわけでもないが、拗ねたように口を尖らせているのがマスク越しでもわかった。

「…なんでもありません。紅茶でいいですか」

いいよ、と返すと彼は扉の奥に消えた。その背中にはいつもの元気はないように思える。しばらくしてオデコくんがティーセットを、盆にのせて持って戻ってきた。

「あれ、オデコくんは?」

「…今日はやめておきます」

「そう?今日ケーキ一緒に食べようと思ったのに」

ぴょこんと彼のアンテナが動いた。目は口ほどにものを言うが、彼の場合、髪は口ほどにものを言う、だろう。

「マスクあるから食べれないよね」

「だ、大丈夫ですっ」

「僕は、オデコくんの顔を見て、ケーキが食べたいなぁ」

わざとらしく僕は言って、オデコくんを見ると、うらめしそうな顔で僕を見ている。盛大なため息が彼から吐き出された。

「…牙琉検事はにきびとか、無関係なんでしょうね」

え?

「…最近珍しく忙しくて寝不足になったんで、できちゃったんですよ」

ほら、とマスクを外した彼の頬に赤いにきびがぽつんと一つあった。…なんだかかわいいなぁ、なんて。

「かわいいよ」

「なっ!」

ぶわぁあっとオデコくんの顔が赤く染まった。ほんと、かわいいなぁ。

「だって、にきびだけで僕のことずっと考えてたよね」


『じゃ、食べようか』


彼の頬にキスをした。


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あきゅろす。
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