逆転(BL)
ずっと、そのまま(響王)

「君を好きでいてはダメなのかな?」

しばらくの沈黙が部屋を重く包んだ。…一歩間違えれば、ギャグだと思ったのは秘密だ。根が熱血だからなのか、顔が無駄に真剣だ。

「いきなり何を言うんですか」

硬い空気に耐えきれず、資料に目を通しながら俺は言い放った。真剣に関わるだけ、俺の経験上から無駄だと思った。…意外にどうでもいいことで彼は悩むから。

「質問に答えて〜、おデコくーん」

横から倒れこむようにぎゅうっと抱きしめられる。甘んじで受け入れるようになったのは彼が愛しいからじゃない。…断じて。

「……いいんじゃないんですか?」

「疑問文は却下だよ」

あまりにも優しい声に、頬が火照る感じがした。俺に言えと言うのかこの人は。…わかってたけど。

「……いいですよ、別に」

腰を抱きしめる力が少し強くなった。俺の右側でもごもごと、何か言っている…気がする。

「何ですか、もう、いきなり」

持っていた資料をテーブルに投げ捨てた。こんな状態で集中できるわけがない。
口からため息がこぼれるのを、俺は抑えられなかった。

「だってさぁ」

子供のように口を尖らす。少し膨らんだ頬を強めに引っ張った。

「痛いよ、おデコくん」

不機嫌そうに牙琉検事は眉を歪めた。…親の顔が見てみたい。決して、お付き合いの報告とかじゃなくて。

「じゃあ、夢じゃないですね」

顔を合わせずに笑いかけながら、頭を軽く叩いた。左手の袖を軽く引っ張られ、顔を向けると額が軽い音を立てた。

「好きだよ」

「じゃあ、ずっとそのままでいてください」

握り締めていた右手に、俺は軽く力を込めた。


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