『自覚』(火→黒)
「……か、がみ、く…?」
「――――…あ」
熱っぽさ故に頬が赤く、身長差故に上目づかいな黒子。
不思議な色をした大きな目は、ただ驚きに見開かれていて。
しまった。
思わず、気がついたら。
――――口付けてしまっていた。
「っほ…ホラ!
日本じゃ風邪は人にうつしたら早く治るっていうんだろ?」
何とも苦しい言い訳。
小さなガキとは違うんだ。
(…いやガキ相手にそんなんしてたらそりゃただの変態だが)
いくらなんでも誤魔化しきれる訳がない。
その証拠に。
自分に向けられる、不審そうな視線。
「…そうですけど、そんなのただの迷信でしょうし」
まさか本当に信じているのか、と目だけで問われる。
そんなん分かってる。
オレだってそこまで馬鹿じゃない。
他にいい言い訳が浮かばなかったんだ。
気がついたらしてた。
何となくした、じゃ済まない。
キス。
自分から、男に。
それも黒子に。
コイツにキスする理由がない。
体が勝手に動いたんだ。
一体どうしたっつーんだオレ。
理由、理由、理由…なんで、キスなんか。
これ以上の追及を無意識に恐れ、火神の視線が黒子から反れる。
焦る頭に、小さく聞こえた黒子の溜息。
「それに、キミにうつったりしたら意味がないじゃないですか」
例えそれで本当にボクの風邪が治ったとしても。
代わりにキミがダウンしちゃったら、一緒にバスケできないでしょう。
けほん、と一度咳込んで。
黒子はそう続けた。
熱っぽさ故の赤み、身長差故の上目づかい。
気のせいか、先程よりも赤みが増しているような気がする。
ちくしょうめ。
そのうえ、そんなセリフを吐くのかオマエは。
(……反則だろ…)
跳ねる心臓と共に、火神は一気に自覚した。
好き。
オレは、黒子が好きなんだ。
end.
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