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極道うさぎに恵みあれ

「それで今度保護者さんの集まりがあるんだけど、藤城んとこは誰来んの?」
「お世話の人が来ると思います」
「お兄さんだって居るんだろ?人に任せっきりなの?」
「お仕事……忙しいから」


寂しいのを人のせいにして責めても何も解決はしない。
どうしようもないってわかってるから、だからせめてちょっと甘えてみる。
寂しいって言って困らせるぐらいいいよね?


教室に戻ると、集まって俺の話をしていたらしく、誰々が可愛いって言ってたなどと報告された。
自分の何が可愛いのか疑問でしかない。
そして彼女は居ないのかとか、そもそも女の子と付き合った事があるのかなどと質問攻めにあった。
どうも自分は基本的に感情が言動になかなか分かりやすく表れないようで、こういった場合も困らせてしまう事が多い。
けれど、今回は違った。

「めぐちゃんはそーゆー話しないの!お前らと違ってキレーなんだよ!」
「だから聞きたいじゃん!」
「ダーメーだっつの!」

ユッキーがフォローしてくれて助かった。
そんな会話に入る事が出来ずに、紫央君がノートを破いた紙で○×ゲームをして遊ぶ。
言葉ではないけれど、紫央君もフォローしてくれているのだろう。

「お姉さんに頼んで任せてみたら?」
「あ゛ーッ!めぐちゃんの前で下品な話禁止!」
「でも付き合うなら世話好きな子とかが合うんじゃねーの?」

あー、と皆の賛同を得たらしい意見をバッサリ切り捨てるユッキー。

「ダメだね!俺が付き合うから!ねーっ?」

何だかフォローしてくれていた筈のユッキーまで怪しくなってきた。
が、「また言ってる」程度にしか思われていないようで、ホモネタは飽きたとあっさりかわされた。
冗談じゃないと主張しても、同性に好意を持つ人間と接触した事の無い彼らには非現実的過ぎるみたいだ。

「でも藤城見た目カッコイイじゃん?出来るか出来ないかで言ったら出来ねぇ?」

思ってもみない発言はまたも皆の賛同を得た。

コツを知っているのか、紫央君は○×ゲームが強い。
むくれてちらりと伺うと、ニヤリと笑う。
それが暗に弱いと言われてるみたいで悔しい。

「あの二人すげぇ平和だ」

気付いた一人につられて視線が集まる。

「ごめんね、めぐちゃん。俺全然フォローになってなってなかった」
「今更だ、男好き」

そしてユッキーに紫央君のツッコミが入る。


恵が帰った後、放課後の静かな教室で、政幸と紫央は落ち着いたトーンで会話していた。
内容は恵について。

「めぐちゃんさぁ……嫌な顔しないよな」
「可哀想に」
「オイ!真面目に聞け!」

お前に付きまとわれても嫌な顔をしないで付き合ってくれている恵が可哀想だ、と皮肉る紫央の顔には、信頼する友人にしか見せない気の許した笑みが浮かぶ。
あどけない程無邪気な恵のそれと違ってはいても、彼なりに素直な薄笑い。

「アイツらはさ、ぼーっとしてて何言っても平気だと思ってんだよ!」

紫央は返事はしなかった。
政幸は彼に惹かれているから彼を贔屓目に見て、冷静で公平な見方が出来ないと思ったからだった。

「今日さ、親代わりって言ってたじゃん?」
「ああ」
「よく休み時間とか携帯かかってくるし、大事にはされてると思うんだけどさ」

二人の頭に同じシーンがよみがえる。

「多分……もしかしたら家で一人で飯食ってんじゃねーかな、って」

ハッキリそう口に出して言ったわけじゃない。
人と食べる事が無いと言っただけで、それが「家族以外の他人(ひと)と」という意味だって可能性も無いわけじゃない。
だけど、寂しさが不意に伝わってしまった。

「めぐちゃんだって何でも平気なわけないじゃん。別に差別して言ってるんじゃないけどさぁ、少なくとも実の親とは別れてるって事だろ?」
「わかる。俺らより傷付いてるって言いたいんだろ?」
「そう!それ!だから俺らより優しいんだよ。人の気持ち考えてくれんだよ」

だから否定も拒絶もしない。
相手の気持ちを考えて、傷付けない方法を探す。
そんな健気な彼を知った政幸は更に彼に惹かれ、可愛らしい雰囲気に惹かれて浮かれていただけの過去の自分に苛立った。

『二人の方が優しいよ』

「いやー。やっぱめぐちゃんの方がよっぽど優しいわ。つーか何でお前も入んの!?」
「あ?」
「○×ゲームで遊んだだけで『優しい』かよー!ずりぃよなー!ギャップか!『貴方って、意外と優しいのねっ』的なアレか!!」

女の子の声色を真似てセリフを言う政幸は、全開で友人に嫉妬をする。
同性が恋愛対象に入ると聞いた事も無ければ、これっぽっちもその気を感じた事が無い相手でさえ、恵によく思われるのは悔しいようだ。

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