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詩篇
32.闇夜の鴉
いつからか
暮れたままの深い夜
籠められたその羽は
気付けば黒く侵蝕され
月も昇らぬ闇夜に紛る

怒鳴り続けて声を枯らし
観者には何処と判らぬと
悟った頃には
もうろくに鳴けもしない
秘めやかな羽音さえ
衰弱を強めるだけだと

降る雨に打たれ
濁る池に溺れ
傷む羽を引き摺って
兎の巣穴に墜ちるよに
暗然な場所に包まる

油断してうなされては
夢想にそっと慰められる
息を潜めて遣り過ごすしかない
接触で痺れる弱体を
だからどうか触れないで
無闇に入って来たりしないで
苦痛に絶叫するのさえ
今はとても辛すぎる

安らかに癒えるのを待って
再び地上へ戻れるのを

白を切ってこじれた糸を
解き明かすのを夢見て

風に煽られ転がる此の身を立て
すっかり癒えるのを待って

歌える声を
飛べる羽を
自在な心を以て
再び誕生できる日を待って

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