じゃ、いこーぜ。と藤堂くんと私は教室から出ようとしたところで、原田先生に呼び止められる。 「おい、平助。鈴木と二人きりだからって襲うんじゃねーぞ」 「んなことするかよ!左之さんじゃあるまいし」 「…ま、そうだな。鈴木も一応気を付けろよ」 男はみんな狼なんだからな、と先生は私に向けて付け足した。ウインクも込みで。 思わず気障な部分に、見とれてしまったのは言うまでもない。 「……」 「………」 男子と二人きりで帰るのは初めてで、何を話していいやら緊張する。電車を降り、私は藤堂くんより数歩後ろで歩いていた。 「あ、あのさ」 「え。な、何?」 「鈴木って」 立ち止まって振り向く藤堂くん。私はいきなりのことに驚いて、声が震えていた。藤堂くんはごくりと息を飲んで、言った。 そこで少し間が開く。何故か私の心臓は、どくどくと落ち着きがなかった。 ―…左之さんのこと。好き、だろ? 藤堂くんはそう呟くように言った。心音が煩い。″好き″ということだけで、何かが私の心を掻き立てるのか。 終始無言でいると、「いや、何でもない」と藤堂くんはまた歩き出す。藤堂くんと地面を交互に見ながら、私はスカートの裾をギュッと握った。 「…好き、だよ」 この想いは本当だから。ただの先生じゃなくて、一人の男の人として好き。これはもう自分ではっきりと認められる。 「迷惑かな…」 「いや。…少し気になっただけなんだ」 従兄弟の、それに一緒に住んでいる藤堂くんにとっては迷惑なのだろうかと不安で思わず口にしてしまったが、杞憂におわったみたい。 「俺は別に左之さんにいいつけたりしないし、逆に鈴木のことを応援する気で…、いたり」 「えっ?」 私は慌てて藤堂くんを見たが、藤堂くんは「ここが今のオレんち。」と一言告げて玄関を開けたので私も藤堂くんに続いた。 090328 by Fascinating |