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07:そこにあった、何か

「なぁ…体調大丈夫?」


私がクラスに戻って、話し掛けてきたのは隣の席の藤堂くんだった。


「あ、うん平気」

「これ、さっきの時間のプリント」


手渡されるプリント。それに加えてノートもあった。


「よければ使えよ」

「…ありがとう」


少しぶっきらぼうに藤堂くんは言った。あまり話したことのない藤堂くんは少し近寄りがたいイメージだったけれど、とても心優しい人だったみたいだ。
気が付けば今日の授業は終わって、原田先生が来てSHRが始まった。


「お前保健室で休んでたらしいけど、大丈夫か」


SHRが終わり、生徒たちは掃除や部活、帰宅へとクラスから散らばっていく。私はバッグに荷物を詰めていると、原田先生から声がかかった。


「はい、もう大丈夫です」

「そうか」


こういう面倒見がいいところとか、些細な気づかいがあるから原田先生は人気なんだよね。


「あの、藤堂くん」

「ん?」

「ノート、返すの来週でもいいかな」


そういえば。と思って、まだ帰らずに隣でPSPをしている藤堂くんに声をかける。
藤堂くんはディスプレイに視線を釘づけたまま、結構な早さでボタンを押しながらううんーと唸る。
今日は金曜日だから、返すのは月曜日になってしまう。


「土日に少しはノート見たいけど……くっそ、ゲームオーバーかよ!」


ゲームオーバーになったPSPを藤堂くんは電源を落として、顔を上げた。私は、じゃあ月曜日に借りようかなと言おうとしたら藤堂くんが「あー!」っと大声をあげた。


「そうだよ、俺んち来ない?」

「えっ?」

「いいよな?左之さん」


私はいきなりのことで、目が点になりながら藤堂くんをみた。目の前で原田先生が、はぁーと深いため息を吐いた。


「あぁ俺は別に構わない、けどな平助。鈴木が困ってるだろ」


なんでそこで原田先生が出るの、と不思議に思っていると藤堂くんが言った。


「そうそう。オレ、左之さんの従兄弟なんだよ」

「左、之さん?」

「そ。左之さん」

「四月に自己紹介したんだけどな。俺の名前は原田左之助」


だから左之さんって呼んでんだ。と藤堂くんは言う。
え、藤堂くんと原田先生が従兄弟?
二人を交互に見ながら「従兄弟…?」と聞くと二人とも上下に首を振った。

話を聞くと、藤堂くんの家は結構遠くて、通学をどうするか迷ったらしい。そこで藤堂くんの家より従兄弟の原田先生の家の方が、遥かに近いから一緒に住んでるという。それに原田先生はそこの教師というのもあって、藤堂くんを預けたらしい。


「で、鈴木来る?」

「じゃあ行こうかな…」


まさかの出来事で唖然としつつ「先生の家にお邪魔できる」と少し下心を持ちながら頷いた。




0326 by Fascinating


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