肩を揺すられて、声が聞こえた。私の名前を呼ぶ声。目を開けると真っ白な天井と。 「鈴木さん。起きて下さい」 「…雪村せんせ?」 「おはようございます」と綺麗に微笑む雪村先生は、私の顔を覗きこんだ。私は壁の時計を見るが、寝てから一時間しか経っていない。でもぐっすり寝られたみたいだ。 「体調はどう?」 「えっと…大丈夫です」 「じゃあ次の授業は受けられるね」 ゆっくりとベッドから起き上がる。後十分、授業終了のチャイムが鳴るまで、私は保健室の長椅子に座った。雪村先生は自分の机に戻って、なにやら書類を書いている。 「あの、先生」 「ん、何かな?」 「…もし、好きになった人に相手がいたら…どうしますか」 何聞いてるんだろう、自分は。よりによって雪村先生に。雪村先生はペンを動かすのを止めて、ジッと私を見た。 「恋愛相談かぁー」 私もそのくらいの時は恋をしていたなあ、なんて先生は呟き、そして「私はね」と続ける。 「諦めない、かな。というか諦められないと思うの。」 「……」 「自分の気持ちを、無理に抑える必要はないんじゃないのかな」 「鈴木さんも頑張ってね」と雪村先生が言った直後、チャイムが鳴った。私は慌てて立ち上がる。 「ありがとうございました」 扉に手をかけて、振り替える。一言お礼を言って保健室から出た。廊下は休み時間となったので、あちこちからしゃべり声が聞こえてくる。その中で「諦めなくていいのかな」と私は教室へ向かいながら小さく呟いた。 告白もしないで諦める、私はそんな考えを捨てようと思った。 どうせなら、告白して潔く諦めよう。例え雪村先生が相手だったとしても。 0325 byチェリー |