[携帯モード] [URL送信]
06:ひとり三角形
肩を揺すられて、声が聞こえた。私の名前を呼ぶ声。目を開けると真っ白な天井と。


「鈴木さん。起きて下さい」

「…雪村せんせ?」


「おはようございます」と綺麗に微笑む雪村先生は、私の顔を覗きこんだ。私は壁の時計を見るが、寝てから一時間しか経っていない。でもぐっすり寝られたみたいだ。


「体調はどう?」

「えっと…大丈夫です」

「じゃあ次の授業は受けられるね」


ゆっくりとベッドから起き上がる。後十分、授業終了のチャイムが鳴るまで、私は保健室の長椅子に座った。雪村先生は自分の机に戻って、なにやら書類を書いている。


「あの、先生」

「ん、何かな?」

「…もし、好きになった人に相手がいたら…どうしますか」


何聞いてるんだろう、自分は。よりによって雪村先生に。雪村先生はペンを動かすのを止めて、ジッと私を見た。


「恋愛相談かぁー」


私もそのくらいの時は恋をしていたなあ、なんて先生は呟き、そして「私はね」と続ける。


「諦めない、かな。というか諦められないと思うの。」

「……」

「自分の気持ちを、無理に抑える必要はないんじゃないのかな」


「鈴木さんも頑張ってね」と雪村先生が言った直後、チャイムが鳴った。私は慌てて立ち上がる。


「ありがとうございました」


扉に手をかけて、振り替える。一言お礼を言って保健室から出た。廊下は休み時間となったので、あちこちからしゃべり声が聞こえてくる。その中で「諦めなくていいのかな」と私は教室へ向かいながら小さく呟いた。
告白もしないで諦める、私はそんな考えを捨てようと思った。
どうせなら、告白して潔く諦めよう。例え雪村先生が相手だったとしても。




0325 byチェリー


[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!