欠伸を噛み殺す。ついでに生理的に涙が出てきた。 原田先生と自習室で二人きりだったのは昨日。それから家に帰って必死に勉強した。なんせ単位がかかっている。のと、ただ褒めてもらいたいからという自分の私欲。気が付けば深夜だったから、寝るのは遅なって今日は寝不足というわけ。 目を擦りながら校門をくぐり教室へ向かう。腕を枕代わりにして、机にうつ伏せになる。目を閉じていたら、眠くてうつらうつら意識が無くなっていく。 「っ!」 バコンといい音がしてハッと目覚めた。じわじわと後頭部に痛みが襲ってくる。顔を上げるとそこには、教科書を丸めて持っている原田先生が突っ立っていた。 「SHRで寝るなんざ、居眠りにしちゃあ少し早いんじゃないか?」 「すみません…」 一旦は謝るものの、スーッと夢の世界へ旅立とうとしたら原田先生にため息を吐かれた。 ごめんなさい、眠気には勝てません。内心申し訳なくてもう一回謝った。 ふと意識が浮上して目を覚ます。時計をみたら、まだ一時限目だったみたい。今日一日ぼうっと過ごしていたら、いつもより時間の流れが長く感じた。 原田先生と視線が交わった帰りのSHRも終わり、当番だった掃除も心はここにあらず。早く、早く二人きりになりたいな。 「お、待ったか?」 静かに開かれる自習室の扉。 原田先生のその言葉が、まるでデートの時のようなセリフに思えて気恥ずかしく感じた。昨日と同じ、私の向かい側に座りプリントを手渡される。 「これを、んー…三十分くらいでやってみてくれ」 小テストみたいなものだな、と思った。二十問だけど内容が濃い。さすがは原田先生というべきか、手抜き問題は一切無い。唸りながら一問一問解いていく。見直しをじっくりとして、先生に提出した。 先生は持参した赤ペンを取り出す。赤ペンがさらさらとプリント上を滑らかに動く。丸の連続に思わずにやけそうになった顔、だけど。 「おしい、残念だな」 「ええっ!」 「まっ、お前が勉強したってのは朝から分かってたよ」 単位を落とすというのは半分冗談だしな、と原田先生は笑った。本当に単位を落とされたら、私は泣いていましたよ!と心の内で叫んだ。 プリントの最後の一問が間違っていたみたいで、チェックが入って返される。 「この調子でテスト、頑張れよ」 「あ…」 「ん?」 「テストのことすっかり忘れていました…」 「お前なぁ…」と私に呆れつつ笑う先生のその笑顔を見て、好きだなぁ…って何度でも思うよ。 0223/0323 by Shady |