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02:褒められたい、その一心で
最悪。と呟いたものは声にならなかった。席替えで浮かれていて、来週に考査があることを忘れていたのだ。
原田先生の持つ授業は歴史全般。暗記物が苦手な私にとっては致命的だ。原田先生の授業は高得点をとりたいと思う私。
そうして、私は勉強することを決意するのだった。


「はぁ…」


家だと集中出来ないからと、私は学校の自習室で勉強をしていた。けれど何から手をつけていいのかよく分からず、ノートも真っ白。自習室にはちらほら生徒がいるものの静寂に満ちていて、思わず眠ってしまいそうで瞼が重くなる。


「お、鈴木」

「…は、原田先生っ?」

「これは俺の授業だな、感心感心」


いきなり現れた先生によって、夢の世界へ誘われようとしていた眠気は吹っ飛んでいく。なんで原田先生が!とどもりながら言うと、原田先生は壁に貼ってあるプリントへ指を差した。
「今日は俺の担当」という言葉は耳を通り抜けていった。プリントには【自習室の見回り・監督】の欄があり、今日の日付に原田先生の名前があった。


「で、ため息ついてどうしたよ。幸せが逃げるぞ」

「えー、と…」


目の下にある教科書、真っ白なノートを見つめながら何を言えばいいのか迷った。
(分からないところがあって…でも、授業は聞いていたんですが)などと脳内で考えていると、椅子の引かれる音がして視線を上げた。


「なっ…」

「ん?」


原田先生はいつの間にか、私と向かい合うように目の前に座っていた。その距離が近い。原田先生は頬杖をつきながら、目の前の真っ白なノートを見て言う。


「まぁ、この様子じゃ分かんねぇとこでもあるんだろ?」

「は、はい…」


原田先生は笑いながら「質問に遠慮すんなよ」と私の頭を優しく撫でた。
教室より間近で見る原田先生の顔に胸が高鳴っていくのを感じた。




0217/0320 By Shady


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