こう、急に平衡感覚がなくなるみたいに身体がぐらついて足を踏張る。 慌てて目を開けると、原田先生は机に向かってなにやら書いていた。 それを見てあれ?と矛盾に気付く。 「…っ!先生?!」 「鈴木ー、やっと起きたかぁ。寝言言ってたぞー」 先生は“やっと起きたか”と言った。 もしかしなくても夢を見ていたのだろうか。夢の内容を思い出して、急に恥ずかしくなった。 何ていう夢を見ていたんだ! そんな顔を見られたくなくて、自分の足に視線を移して聞いた。 「…であの、用事って」 「あぁ、遅くなって悪いな」 「!これ」 先生は一枚のプリントを私に渡す。 それはいろいろな大学のオープンキャンパスの案内などだった。 「二者面の時、進学したいっつってただろ?で、少しでも力になりたくて調べてみたんだが…」 「あ、ありがとうございます!」 「鈴木だけだから、他の奴には内緒、な」 先生がわざわざ私の為にしてくれた。なんて、感謝の気持ちでいっぱいで嬉しさで顔が綻ぶ反面、迷惑をかけてスミマセンという気持ちが胸を占めた。 「…、なぁ」 「はい?」 いつになく真剣な瞳で私を見、先生はゆっくりと言葉を紡いだ。 「鈴木は、平助と付き合ってんのか」 「え」 「いや、よく職員の方にも噂は届くんだよ」 「先生」 それってどういう意味で言ってるのか疑問が私の中に渦巻いた。 期待してもいいの? これも夢? 全身が火照る。 「私…」 「いや、まぁ…俺が聞くことじゃないよな」 「……っ」 「……」 決意して言おうとしたら、先生に遮られ頭に優しく手を置かれた。 その言葉は拒絶されているみたいに感じた。 私と先生との見えないライン、線があるみたいに。それを断ち切りたくて、震える口を開いた。 「私!先生のこと、諦められないです!」 「……」 「このままでもいいです。けど少しは希望があるって…期待してもいいですか」 先生のその困ったような顔は、やがて笑みに変わっていった。 0615 by睡眠発作 |