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01:希望の席は最前列
朝からそわそわと落ち着かなかった。
そしてついにやってきた決戦のHR。


「じゃー、今から席替えするぞ」


原田先生が教室に入ってきて言うと、クラス中が盛り上がった。
私も密かに最前列を狙っている席替え。そこは、朝や帰りのSHRの短い時間でも原田先生を近くで見られるから。
今の一番後ろの席より遥かにいい席。

席替え方法はクジ引き。前の席から順番に、ビニール袋に入った数字の書いてある紙を引いていく。だんだんと順番が近づいてきて、クジを引く番がやってきた。柄でもないのに神様に祈りつつ引いた。
紙に書いてある数字は八だった。といっても、まだ自分の場所は分からない。全員が引いた後に、原田先生が黒板に数字をランダムに書いていくのだ。


「みんな引いたな。それじゃ書くぞー」

「先生!オレの番号は一番後ろに!」

「あたしもお願い!」


やっぱり後ろの席は人気なようで、お願いという言葉がちらほら聞こえてきた。


「じゃあ、番号を言え。お望み通り最前列にしてやるから」


原田先生は口端を上げて言った。自己アピールをしたクラスの男子は引きつった笑みで「やっぱいいです」と断ったのだが。


「ほら、早く言えっての!」

「えー、えーと。…八!」

「ふふん、そうか」


カツカツとチョークを鳴らして書かれる数字。教卓の目の前は八だった。それから先生はものの数十秒で、全て数字を書き終えて「移動しろ」と伝える。
思いがけない偶然に驚き、呆気にとられながら指定された席に移動した。そこは原田先生が間近で立っていて、見つめていると目が合った。


「鈴木…?おい、山口!お前ウソつくなよ!」

「オレは十八ってちゃんと言いましたよー」

「…あ、あの先生。私ここでいいです」


寧ろここが良かったんです!と叫びたい気持ちを抑えて静かに言った。
山口くんは十八番の紙をひらひらさせながら、原田先生を見た。私は、ありがとう山口くん!と心の中で礼を言った。あながち神頼みをするのもいいかもしれない、と思った。


「鈴木がそう言うならいいんだが…」

「じゃあこれで解散。チャイムが鳴るまで教室から出るなよ」


原田先生はそう告げて教室から出て行った。


「鈴木さん、なんかごめんねー」

「あ、別に大丈夫だから…」


山口くんが緩く言いにきたけども、私はこれから心臓持つだろうか、と心配だった。




0216/0320 By Shady


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