[携帯モード] [URL送信]
16:偽りを含む世界

藤堂くんとは駅で別れた。
"じゃあまた明日な"ってひまわりのような笑顔の藤堂くんは少し眩しかった。


今日はタイミングがいいように席替えがあった。原田先生の目の前というのは、今の私にとって苦痛だったのでよかったのだが。
席替えで藤堂くんとも別れ、また後ろの方の席になってしまった。
どんどん先生との繋がりが切れていく気がする。



お昼休み、友人と机を並べてご飯を食べていると男子グループの方から大声がした。


「平助、お前さぁ…、鈴木と付き合ってんの?」

「なっ、何言ってんだよ新八っつぁん!」


永倉くんはクラスメイトの中で結構声が大きい。なので教室中に永倉くんの声は響いた。
騒ついていた教室は一瞬にして静かになり、ひそひそと囁かれいろいろな視線が私に突き刺さる。


「…で、どうなの千佳」


教室の静寂は一瞬だけだったらしく、今は先程のことは無かったように騒ついている。けどチラチラと私に視線が注ぐので、白昼夢ではないと理解した。
友人は小声で私に問うので、私は直ぐに否定した。


「そんなことないよ…」


だって、原田先生のことが好きなんだよ。
振られても、今でも好き。

そんなこと、友人に打ち明けられるハズもなく笑った。



「鈴木さん、実際のところは?」

「へ?」


先程の永倉くんと、その隣に座って聞いていた沖田くんが私に聞いてくる。
二人の後ろに藤堂くんがいて「ごめん!」というように両手を合わせていた。


「こういうのは当事者に聞くのが手っ取り早いだろ」

「平助の言うことがイマイチ信じられなくてね」

「え、えーと…、違う、よ」


そう言えば、永倉くんは心底驚いたように…、オーバーすぎるリアクションをとった。


「マジで?!」

「だから言ってるじゃん!鈴木が困るしやめてくれよ!」

「でも証拠写真があるんだよね…平助がそんなこと言うと思ってさ」


これで逃げられないでしょ?携帯の液晶を藤堂くんに見せる。そして口角を上げてニヤリと沖田くんは笑った。

藤堂くんの顔が青くなったり赤くなったりしたので、気になって沖田くんの携帯を覗く。
それは、昨日手を繋いで帰っているところの写メだった。バッチリと映っている。


「千佳…、いつの間に?」


友人はそれを見て私をジッと見る。その顔には“何で一言も言ってくれなかったの?”と書いてあった。
友人は完全に誤解していた。



この三人の誤解を解くのに何分かかったことか。未だ半信半疑の沖田くんと永倉くんだけど、分かってくれるはずだろう。

私と藤堂くんは長いため息をついたのだった。

けれども翌日に“私と藤堂くんが付き合っている”ということが、噂として学校中を駆け巡ることとは、この時露ほどにも思わなかった。




0529 byチェリー


[←][→]

あきゅろす。
無料HPエムペ!