藤堂くんとは駅で別れた。 "じゃあまた明日な"ってひまわりのような笑顔の藤堂くんは少し眩しかった。 今日はタイミングがいいように席替えがあった。原田先生の目の前というのは、今の私にとって苦痛だったのでよかったのだが。 席替えで藤堂くんとも別れ、また後ろの方の席になってしまった。 どんどん先生との繋がりが切れていく気がする。 お昼休み、友人と机を並べてご飯を食べていると男子グループの方から大声がした。 「平助、お前さぁ…、鈴木と付き合ってんの?」 「なっ、何言ってんだよ新八っつぁん!」 永倉くんはクラスメイトの中で結構声が大きい。なので教室中に永倉くんの声は響いた。 騒ついていた教室は一瞬にして静かになり、ひそひそと囁かれいろいろな視線が私に突き刺さる。 「…で、どうなの千佳」 教室の静寂は一瞬だけだったらしく、今は先程のことは無かったように騒ついている。けどチラチラと私に視線が注ぐので、白昼夢ではないと理解した。 友人は小声で私に問うので、私は直ぐに否定した。 「そんなことないよ…」 だって、原田先生のことが好きなんだよ。 振られても、今でも好き。 そんなこと、友人に打ち明けられるハズもなく笑った。 「鈴木さん、実際のところは?」 「へ?」 先程の永倉くんと、その隣に座って聞いていた沖田くんが私に聞いてくる。 二人の後ろに藤堂くんがいて「ごめん!」というように両手を合わせていた。 「こういうのは当事者に聞くのが手っ取り早いだろ」 「平助の言うことがイマイチ信じられなくてね」 「え、えーと…、違う、よ」 そう言えば、永倉くんは心底驚いたように…、オーバーすぎるリアクションをとった。 「マジで?!」 「だから言ってるじゃん!鈴木が困るしやめてくれよ!」 「でも証拠写真があるんだよね…平助がそんなこと言うと思ってさ」 これで逃げられないでしょ?携帯の液晶を藤堂くんに見せる。そして口角を上げてニヤリと沖田くんは笑った。 藤堂くんの顔が青くなったり赤くなったりしたので、気になって沖田くんの携帯を覗く。 それは、昨日手を繋いで帰っているところの写メだった。バッチリと映っている。 「千佳…、いつの間に?」 友人はそれを見て私をジッと見る。その顔には“何で一言も言ってくれなかったの?”と書いてあった。 友人は完全に誤解していた。 この三人の誤解を解くのに何分かかったことか。未だ半信半疑の沖田くんと永倉くんだけど、分かってくれるはずだろう。 私と藤堂くんは長いため息をついたのだった。 けれども翌日に“私と藤堂くんが付き合っている”ということが、噂として学校中を駆け巡ることとは、この時露ほどにも思わなかった。 0529 byチェリー |