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09:太陽はまだ沈まない
原田先生の家は綺麗な純和風だった。大きすぎず至って普通の一軒家。けれど外装はシンプルで綺麗で…、豪華さを感じた。私なんかが入っていいのかと戸惑いを感じるほど。


「お邪魔します…」


藤堂くんに続いて玄関に入る。挨拶は綺麗な通路に消えていく。


「鈴木、紅茶飲める?」

「う、うん」


リビングに連れられてイスに座る。で、ここにきた本当の目的、藤堂くんのノートを取り出して写しはじめることにした。
コップを二つ持ってきながら藤堂くんは私の目の前に座る。自習室の時の原田先生みたいに。


「はい、紅茶」

「ありがとう」


藤堂くんから差し出された紅茶を一口飲んで、腕を動かす。紅茶はいい具合に蒸れていておいしかった。


「でさ、鈴木」


さっき言ったこと、本当だから。と藤堂くんは言った。それを聞いて、後数行で写し終えるところで力が籠もったのかシャーペンの芯が折れた。


「さっき言ったことって、…」

「左之さんのこと」

「……」


私が黙り込んでいると、それとと藤堂くんは続ける。


「左之さんは雪村先生と付き合ってないよ」

「え?」


これ、この間俺が噂気になって左之さんに問い詰めたんだけど。気にしていたんだろ。藤堂くんは穏やかに笑った。
衝撃的な事実に驚きながら、ホッと胸を下ろした。


「あ、ありがとう…」


ついでに書き終わったノートを藤堂くんに渡した。あ、とまた藤堂くんは声をあげて、そして私に向かってニヤリと笑った。


「な、飯食っていかね?左之さんの手作りだしよ」


いきなりの藤堂くんの提案に私は呆然とした。一緒にご飯、それに原田先生の手作り?…そんなの


「でも迷惑じゃ…」

「大丈夫、大丈夫。ああみえて、料理うまいんだぜ左之さん」


勧めてくる藤堂くんに、結局私が折れた。嬉しいのは確かだったけれど。今日は藤堂くんに振り回されてばっかりだと思った。
そして夕飯を友達と食べてくる、と家族に連絡をして、原田先生が帰ってくるのを待っていた。




0404 チェリー

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