原田先生の家は綺麗な純和風だった。大きすぎず至って普通の一軒家。けれど外装はシンプルで綺麗で…、豪華さを感じた。私なんかが入っていいのかと戸惑いを感じるほど。 「お邪魔します…」 藤堂くんに続いて玄関に入る。挨拶は綺麗な通路に消えていく。 「鈴木、紅茶飲める?」 「う、うん」 リビングに連れられてイスに座る。で、ここにきた本当の目的、藤堂くんのノートを取り出して写しはじめることにした。 コップを二つ持ってきながら藤堂くんは私の目の前に座る。自習室の時の原田先生みたいに。 「はい、紅茶」 「ありがとう」 藤堂くんから差し出された紅茶を一口飲んで、腕を動かす。紅茶はいい具合に蒸れていておいしかった。 「でさ、鈴木」 さっき言ったこと、本当だから。と藤堂くんは言った。それを聞いて、後数行で写し終えるところで力が籠もったのかシャーペンの芯が折れた。 「さっき言ったことって、…」 「左之さんのこと」 「……」 私が黙り込んでいると、それとと藤堂くんは続ける。 「左之さんは雪村先生と付き合ってないよ」 「え?」 これ、この間俺が噂気になって左之さんに問い詰めたんだけど。気にしていたんだろ。藤堂くんは穏やかに笑った。 衝撃的な事実に驚きながら、ホッと胸を下ろした。 「あ、ありがとう…」 ついでに書き終わったノートを藤堂くんに渡した。あ、とまた藤堂くんは声をあげて、そして私に向かってニヤリと笑った。 「な、飯食っていかね?左之さんの手作りだしよ」 いきなりの藤堂くんの提案に私は呆然とした。一緒にご飯、それに原田先生の手作り?…そんなの 「でも迷惑じゃ…」 「大丈夫、大丈夫。ああみえて、料理うまいんだぜ左之さん」 勧めてくる藤堂くんに、結局私が折れた。嬉しいのは確かだったけれど。今日は藤堂くんに振り回されてばっかりだと思った。 そして夕飯を友達と食べてくる、と家族に連絡をして、原田先生が帰ってくるのを待っていた。 0404 チェリー [←][→] |