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05

それから数日、夕月は新選組にお世話になることになった。
これも全て、副長である土方のおかげだった。

千鶴の運命が180度変わったあの日の夜、偶然夕月もはぐれた羅刹を目撃していて、何事かと恐ろしくなった夕月は屯所に聞きに来た。という設定で監視付きな日々を過ごしている。
中庭に倒れていたのに、とそれを不審に思ったのは、夕月を介抱した千鶴、原田、藤堂の三人だが、夕月に対して理由を問いただす訳もなくやさしく接してくれていた。

元々新選組隊士ではない千鶴は、男所帯のなか心細かったこともあってか、それに女同士ということもあり夕月と仲良くなった。
…が夕月にしてみれば、千鶴は自分の母親であり、尚且つ自分よりも年下であるというなんとも奇妙、複雑な心境だった。


「あの、本当に手伝わせてしまってすみません。」


千鶴は丁寧に頭を下げた。
今日の朝餉の当番が千鶴だったので、夕月は手伝いにきた。尤も、夕月は料理なんてものはあまり出来ないが、火の管理は出来るだろうと思い立った訳で。
千鶴は首を横に振るが、夕月が「早く朝餉の準備をしましょう。」と急かすので、申し訳なさげに台所に立ったのだった。


夕月は腕を捲る。真新しい袖に触れて、ふとその時の場面が鮮明に蘇った。

夕月の着ていたボロボロだった着物は、新しい袴になっていた。それは夕月が新選組に来た次の日の朝、土方から手渡されたものだった。
私がこんな真新しいものを貰っていいのかと夕月は問いただしたが、新選組の局長である近藤は父親のように笑顔で頷いたのだ。



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あきゅろす。
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