あれから支院ちゃんと会うようになってから、幾日たっただろうか。 長い時間会っている気がする。 が、実際まだ数日しか経ってないのに、毎日毎日夜を迎えることが嬉しくある。 毎晩森へ行ってることを、枢は何か気付いていそうな視線を向けてくるけれど黙認している。 こんなところを英達に見られたりでもしたら…と一条は苦笑した。 彼女はいつもそこにいる。 僕よりも早い時間に居て、遠くをぼんやりと見つめているのだ… 「支院ちゃん」 「……、一条さん。こんばんは」 ゆっくりと振り向く彼女に、僕の胸は一段と高鳴る。 僕は、いつものように支院ちゃんの隣に座り込んだ。 「ね、支院ちゃん。 来週に聖ショコラトルデーがあるんだよね」 「………」 「よかったら僕にチョコ作ってきてくれない、かなーって…」 「………」 ヘラヘラと笑っている僕だけれど、内心心臓がバクバクと脈打ち、緊張している。 断られたら無様だなぁ、とか他人事のように思いながら返事を待つ。 「……、…」 支院ちゃんの周りで微かに揺れた空気。 「一条さんは、…そんなもの貰って嬉しいんですか? 貴方なら沢山くれる人がいるでしょう?」 確かに毎年の聖ショコラトルデーには、女の子から沢山のチョコを貰う。 気持ちは嬉しい。 ―――だけど。 「だけど、支院ちゃんから貰いたいんだよ…」 僕は支院ちゃんの目を見ながら、つぶやいた。 その声は弱々しくて、情けなかった。 「別に。作ってきてもいいですけど…」 支院ちゃんの頬はほんのり赤くて、僕までも照れた。 9/10ぷちこ |