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03:starred sky

「本当に来てくれたんだね」
「…一応約束しましたから」


先に来ていた支院の隣に一条が座る。

風が吹き、ふわりと甘い香りが漂う。


「支院ちゃん、香水してるの?」
「…ああ、友人に掛けられたんですよ」
「へぇ、可愛いね」
「…は?」


脈絡の無さに思わずそんな声を上げる。


「ギャップがなかなか良い感じだよ」


…おめでたい頭だことだ


「あれ、怒った?」
「別に怒ってないです」


(「…呆れてはいるけれど」)



「なら良かった」

そう言って笑う一条の髪が、月明かりで輝く。
 まるで、すぐそこに月が在るかの様に…



「どうかしたの?」

不思議そうな声


優しくしないで欲しい

私は逃げているだけの臆病者なのだから




「…今日はもう遅いし、また明日会おう」

そう言って一条が立ち上がる。

「待って」


気が付くとそう言っていた。


「何、支院ちゃん」

「…また、明日…」
「うん、明日」


遠退いて行く背中を見送る



(「…何を、言おうとしていたんだ私は」)


もう執着することは止めたんだ

何も感じない

何も求めない

そう決めたんだ


…さあ帰ろう

私は砦を後にする


9/2鄙乃


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