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28:this color lasts



「頭痛い」
最近寝不足が続いていたせいか、ガンガンと激しい頭痛がする。

「医務室行ってきなよ」
幼なじみが勧めるので、私は授業が終わった後、医務室に向かった。




ノックして、ドアを開ける。

「…夜間部」
ぽつり漏れる言葉。
そこには、夜間部の皆さま方がいらしていた。


「えっ、水限先輩?」
私にいち早く気が付いたのは、風紀委員の黒住さん。

「どうしたんですか」
「少し頭痛くて来たんだけど…」
先生いないのね…。と頭を押さえながら呟く。



「ベッド余ってるから使いなよ、支院ちゃん。僕が看病するからみんなは犯人探してきてね!」

突然、一条が爆弾を落とした。
その発言にぎょっと黒住さんが驚いたのが分かった。
黒住さんは一条を引っ張り、何やらこそこそと二人して内緒話をしている。



「ちょっと一条先輩。水限先輩を襲わないでください!」
「勿論じゃないか優姫ちゃん。僕は犯人程、血に飢えてないよ」
「…一条先輩を信用しますからね」



そうして夜間部の皆さんと黒住さんは、しぶしぶと医務室を出ていく。
それは一条と二人きりを示していて。
とりあえず頭が痛かった私は、一条に言われたとおり空いているベッドに横になった。


「支院ちゃん…」
「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ」

椅子を引っ張り出して、ベッドの脇に座る一条。
はぐらかすような、苦笑いの一条に少し苛立った。


「言いたいことはちゃんと言ってください」
一条は驚いたように目を開き、そしてゆっくり口をひらいた。


「…事件の犯人の気持ちも分からなくないなぁ、と思っただけだよ」
「事件って…、黒住さんのクラスの人が貧血で倒れた、というやつですか…?」
「…そう」



「好きな子を求める気持ちって、抑えきれない…から」



「…」
「………」
暫し静寂が私たちを包む。

「じゃあ、じゃあ一条さんはその。今、抑えられない…?」
「…そうだよ」


おずおずと投げ掛けた質問は即答され、ばさりと私が寝ているベッドに一条が覆い被さる。
心臓の音が伝わってしまうのではないかと思う程、激しく高鳴る。


「支院ちゃん、ドキドキしてる」
「あたりまえじゃないですか」


小さく笑って、一条は肩口に顔を埋めた。
するすると口唇が首筋に上がってくる。
ひやっとする感触に、たじろいた。
首筋で一条の口が開く。
次に来る痛みを想像して、ギュッと目を瞑った。
…けれど、いつまで経っても痛みが来ないのでゆっくり目を開ける。


「一条、さん」
「…でも、僕はこれで我慢しておくよ」


口唇を掠める熱。
啄むように何度も。


ゆっくりと離される口唇に名残惜しさを感じながら、私は言葉を口にする。


「…好き。私は一条さんの側にいたい」
「僕も支院ちゃんが誰よりも好きだ」
伸びてくる腕に身体を預ける。





私は一条さんが好き。


僕は支院ちゃんが好きだ。



それは誰の想いにも負けないモノ。
それだけは、変わらない。



私たちは罪を重ね続ける。

その抱擁を月だけが、じっと見ていた。




-背月遊戯fin- 12/30 九条


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