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02:under cloud of night

私は空にある月から目をそらし、湖に映る月をじっと見ていた。


隣には一条が(勝手に)座り、二人共無言のまま時が過ぎていく。


けれど、支院にとって無音は心地良いものだった。
虫の音、木々の騷めき、夜独特の空気。
自然はいい。疲れを癒してくれるから……



「ねぇ支院ちゃん」

心地良い沈黙を一条が破る

「なんですか?」

支院は目線を一条に向けることなく、遠くの方をぼんやりと見つめていた。

「…何で君はここにいるの?」

何を言うと思えば…と支院は呆れたように言葉を返す。
「その言葉、そっくりお返ししますよ」


「でも、まぁ。あえていうなら。この生活が疲れるからここにいる、…ですね。
――この場所、好きなんです。汚らわしい日常を、忘れられる気がして」
支院は目を伏せて、ぽつりぽつりと話した。

「…そっか。」
「何か変なコト話しちゃいましたね。忘れて下さい。」


支院はゆっくりと立ちあがり、一条の眼を見た。
にこり、と笑っているのに、冷たい瞳。
「…っ」
どくり、と一条の何かがざわめいた。


「じゃあ、一条さん、私帰りますね」
一礼して踵を返す支院。

「あ、…支院ちゃん!」


「また明日、会えないかな?明日もここで!」

支院の足は止まり、振り向かずに言った。


「かまいませんよ」


一条がはっとして辺りを見ると、誰もいなかった。

「…何やってんだろ、僕」

くしゃと自分の髪を掻き上げると、一条もまた森を去っていった。


そんな一条を見ていたのは空に浮かぶ月、のみ――


8/25・31~9/1ぷちこ


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