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24:how dark so ever the night may be


まだ舞踏祭を終えるには早くて、陽の寮にはあまり人がいなかった。


明かりも点けず、暗い部屋のベッドに蹲る。
小さな頭痛に悩まされながら、私は一条先輩の薔薇を見つめていた。

「そういえば、白薔薇の花言葉は純潔、だったっけな」
愛おしく薔薇を撫でていると、痛みが走った。


「っ…」

薔薇の刺で傷ができてしまった、らしい。じわりじわりと血が滲んでくる。
応急手当てとして、指先を口に含んだら、鉄の味が口内に広がった。



一瞬のフラッシュバック。

私の首筋から流れる血
彼の口元は血で汚れて
地面に滴り落ちる鮮血




「痛い」
頭が割れるんじゃないかと錯覚する程、頭痛が止まらない。
一瞬の映像に映っていた白いジャケットは、夜間部のもの。
思い出したいのに、頭痛が妨げとなる。

「思い出せ…!」
ゆっくりと映像が彼の顔を映し出し。
真っ赤な瞳に、血で汚れている口元。まるで吸血鬼みたいな…
けど、彼の顔は――


「一条、先輩?」
走馬灯のように、脳内へ入る映像。

「…一条さん」
ピースがそろいパズルが完成する。
いつの間にか、涙が頬伝っていた。
何でこんな大事なコト、忘れていたのだろう…。





会場に走りながら戻った。一条を探して。
一条はホールの端にいて、ついさっきまで楽しく踊っていたのに、やめたみたいだ。
一条の目の前に行くと、驚いたように目を見開いた。


「私っ」

「私、…」
言いたいことがいっぱいあって、何から言いだせばいいか分からなかった。


「…ちょっとこっち来て」

一条は悟ったかのように、私の腕を引く。




連れていかれたのは、毎晩訪れていて、私と一条を繋げてくれた森だった。

沈黙に耐え切れず、私はありの想いを口にした。


「…一条さんのこと、好きです」
ぎゅっと抱きついて、締め返される腕に安堵した。

――このぬくもり、やっぱり温かい。


「僕も支院ちゃんのこと、好きだよ。…けど」
いや今くらいは、いいよね。と一条は悲しみを浮かべてつぶやいた。


「…好きだよ、支院ちゃん」

抱き締められながら、一条は私に口唇を落とした。




12/6 九条


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