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18:he used his pistol on me

僕の為なら余計
そんなこと言わないで。



支院ちゃんの吸血鬼になっても構わない、という発言に肝が冷える思いがした。

人間が吸血鬼になるのは、純血種に咬まれる。
即ちたどり着くのはレベルEになりハンター協会から消される、のみだ。
正直支院ちゃんがそんなこと言うとは思わなかったし、少し嬉しかったのもある。

支院ちゃんの事「やっぱり好きだなぁ」と思うけれど、この僕の気持ちを伝えてはいけなくて。
吸血鬼と人間の壁が異様に高く感じた。
だから口には出さないけど伝わって欲しい矛盾に、僕は支院ちゃんを抱き締めるしかなかった。


「好きだよ」と渾身の想いを胸に。





感覚が麻痺しているみたいに、どのくらい時間が経ったか分からなかった。
抱き締めている手を放し、消えていく温もりに淋しさを感じる。

「支院ちゃん。…僕を庇わなくていいよ。どうせ数日の謹慎なんだから」

支院ちゃんは何かをいいたそうにしていたけど、小さく「はい」と溢した。

「戻ろうか」
支院ちゃんの手を引いて部屋を出る。



ソファーには枢が座っていた。僕らを一瞥し、口を開いた。

「…早速だけど水限さん、この事秘密に出来る?」
「この事って…?」
支院ちゃんが尋ねると、枢はゆっくりと言葉を紡いだ。


「僕たち夜間部が吸血鬼だってこと」

「……はい。約束します」
支院ちゃんは決意していたように、枢を見た。
「そう」
けどね、と枢は言葉を続ける。



「危険因子は早く摘み取って置きたいんだ」


「危険、因子…?」
「枢、何を?」
僕らは枢の言葉に、目を丸くさせる。

「水限さんが、言わないという保証は無いだろう。ねぇ一条?」
にこり、と微笑む枢に不安が過る。



「人間と共存の為に、ね」

「っ支院ちゃん!」


枢が何をするのかを理解した時には、既に遅くて。
伸ばした手は触れることも許されず。

呆然とした支院ちゃんはゆっくりと倒れていく。
これで二度目。


けれど一度目と違う事は。
支院ちゃんが目を覚ましたら――。

僕のこと、あの夜の出会いからなにもかも。覚えていないのだろう。



「これが最善の方法だったんだよ…」
ぽつりと呟いた枢の言葉が、耳に残った。




11/26 九条


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