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09:the seed that is sown

「…食べた、かな……」

翌朝も、私は昨日一条に渡したチョコレートのこと…否、一条のことを考えていた。
食べられる味、だったかな……不安だ。

我ながら、非常に女々しいと思う。
けれど、つい気が付くと考えてしまう。

(「…一条さん……」)

…会いたい。
早く夜になって欲しい。
夢のような一時の戯れを、鮮やかな思い出にしたい。

暫く続く、何も無い平和な日常。
今はそれが嬉しい。
昼と夜の壁は大きいけれど、それで構わない。
月を覆い隠す、雲のような存在には成りたくないから……。

血の凍るような、冷たい美しさを持つ一条。
それを例えるならば、血を啜り生きる吸血鬼のような……。
まぁ、それは中身を考えなければのことだが。
しかし、本人に言ったら、どう思われるだろう?
やはり、変だと思うだろうか。

(「言ってみようかな……」)

物は試し。
そんなつもりだった。

でも、口にした夜から、私達は戻れない場所に行ってしまった。
後戻りは、もう出来ない。



静かに回り出した運命の歯車。

…ねぇ一条、貴方は後悔していない?
私を、ヒトを好きになってしまったことを……




10/20鄙乃


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