「…食べた、かな……」 翌朝も、私は昨日一条に渡したチョコレートのこと…否、一条のことを考えていた。 食べられる味、だったかな……不安だ。 我ながら、非常に女々しいと思う。 けれど、つい気が付くと考えてしまう。 (「…一条さん……」) …会いたい。 早く夜になって欲しい。 夢のような一時の戯れを、鮮やかな思い出にしたい。 暫く続く、何も無い平和な日常。 今はそれが嬉しい。 昼と夜の壁は大きいけれど、それで構わない。 月を覆い隠す、雲のような存在には成りたくないから……。 血の凍るような、冷たい美しさを持つ一条。 それを例えるならば、血を啜り生きる吸血鬼のような……。 まぁ、それは中身を考えなければのことだが。 しかし、本人に言ったら、どう思われるだろう? やはり、変だと思うだろうか。 (「言ってみようかな……」) 物は試し。 そんなつもりだった。 でも、口にした夜から、私達は戻れない場所に行ってしまった。 後戻りは、もう出来ない。 静かに回り出した運命の歯車。 …ねぇ一条、貴方は後悔していない? 私を、ヒトを好きになってしまったことを…… 10/20鄙乃 |