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まるマ




「………ふぅん、あんたは『ゲオク』っていうのか」
「………まぁな」
「あんたも魔族嫌いなのか?」
「そりゃなぁ」
「なら、なんでおれと会話してる訳?」
「知りたくねぇのか? お前の置かれてる状況。なら、オレは構わねぇが?」
「いやいやいや! ごめんなさい嘘です知りたいですっ!」

 一瞬、妙なものを見るかのようにその眉が寄せられた。だが、何故だろうか、そこに嫌悪の類の感情はあまり感じられなかった。
 それを不思議に思いながらも、ユーリはゲオクの言葉を待った。

「お前はまぁ誘拐されたんだよ」
「ゆうかい?」
「ああ。カヴァルケードと眞魔国の――人間と魔族の同盟なんかぶっこわす為に、な」
「………そんな……同盟を壊す為、に……?」

 言われた言葉を反芻するユーリの表情からは、色が落ちる。信じられない、と音になるかならないか程度の呟きが漏れた。
 ……否、信じたくないのだ。有り得る話ではある。寧ろ、敵対していた二つの種族がそう簡単に仲良くする事に納得する筈がない。
 押し寄せる痛みを耐えるように手を握り締めて、それでもゲオクを見た。

「あんたは……そんな事をどうしてしたいんだ!?」
「魔族が嫌いだからに決まってるじゃねぇか」
「魔族だって人間だって変わらないッ!」

 冷静に――それでも何処か憎悪が込められ声に、ユーリは怒鳴るように言葉を返した。
 変わらない。変わらない。何も、変わらない。どうしてそれが分からないのだろう。
 折角、魔族と人間との和解への第一歩を踏み出したかと思ったのに。

「寿命が長いのと魔術が使えるってだけ――!」
「それでも、違うだろうが」
「え」
「違う事にならねぇのかよ?」
「それは…! だけど、平和を願う気持ちは同じ……!」
「ここから、出んじゃねぇぞ」

 そう言って、ゲオクは部屋から出て行った。振り返る事すらしなかった。ユーリの声は届かなかった。
 部屋には、扉を閉める音だけが、虚しく嫌に響いた。


「どうして……」

 表情を歪ましたユーリの唇からは、耐え切れなかったかのように呟きが零れ落ちた。

「………違う、違う所なんて……些細なものだ」

 いつか、村田が難しいと言った。ぶつかり合うという事だけはとても簡単で、分かり合う事はとても難しいのだと。
 種族の違い、というのはとても大きい。民族が違うというだけで理解し合う事が難しいのだから、尚更だ。
 人は自分と違うものや多くと違うものは、受け入れ難く出来ているものだ。恐れから共存は難しい。

「……でも、本当に……っ」

 どうして、理解しようと思えないのだろう。どうして、歩み寄ろうと出来ないのだろう。
 魔王誘拐、という目的の為に手を組む事が出来るのならば、それをほんの少し先へと進めないのだろうか。





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あきゅろす。
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