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まるマ




 わざわざ探してやるのも腹立たしいが、まだ言い足りない事があったので僕はあのへなちょこを探していた。
 この僕にここまでさせているのだ、もう一発二発くらい殴らせてもらわなければ気が済まない。
 庭の片隅だろうか、ここから少し離れた場所でふとへなちょこの声が聞こえた。そちらに視線を向けてみる。

「………あー降りれない?そっか仕方ないなー……コッヒー頼むよ?………え、お前コッヒー怖いの?……仕方ないないな………んしょ」

 少しだけ近付くと何かをしているのが分かる。
 事もあろうに、王のような者が木に登っていたのだ。あまりにもがさつな様子で。
 上に付くと、何かを抱えるようにもった。良く見るとその何かが仔猫だと分かる。

「ああ、ちょっと落ち着いてよ!降ろしてあげるから!……ああ、ねぇ、ちょっと……!?」

 仔猫が暴れた所為でバランスを崩したのか、へなちょこは木から真っ逆さま。あまりに突然の出来事に僕に助ける暇などなかった。
 それでも、とりあえず近くによってみる。こんな事では普通は死んだりしないが、あれはへなちょこだから否定し切れない。


「おい、このへなちょこ!何やってるんだ!」
「あーヴォルフラム?猫がちょっと木から降りれなかったみたいでさ……」

 突然前に現れた僕の声に驚きながらも返す。
 状況の説明をしながらも、その視線は心配そうに仔猫を見ていた。仔猫に怪我がないと分かると安心したように息を漏らした。

「そんなもの、そこにいる骨飛族に頼めばいいだろう!?貴様の命令は聞くのだから!」

 それが酷く苛立った。
 怪我がないのは仔猫だけだ。へなちょこ自身には擦り傷や切り傷など、恐らく落下時の木地面によるものが多々あった。

「命令って訳じゃないけど頼んだら、猫怖がってたしさー」
「他の者を呼ぶとか!」
「だってそれまでに落ちて怪我したら大変だよ」
「その代わりに貴様が落ちてるだろうが!」

 馬鹿かコイツは!馬鹿過ぎて話にならない!王としての自覚も威厳も足らない!
 何もかもが苛立たしく感じて、言葉を発した声は全て怒鳴り声にしかならなかった。
 しかしそれに反してコイツは、僕の言葉に怒鳴り返すでもなく静かに苦笑を浮かべた。



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