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まるマ



「コンラッド……っ!」

 コンラッドはおれの安全を確認すると、安心したのか、根性で保っていたらしい意識を失った。
 そりゃそうだ。どれだけの血がこの体から流れ落ちたと思っているのか。
 コンラッドはそれでも笑うんだろうけど。貴方の為ならば何でも差し上げます、と微笑を浮かべるんだろうけど。

「アンタ…馬鹿だよ……!馬鹿だよ…!目ぇ覚ませよ、治癒出来ねぇだろ!?」
「………ユ…」
「うん、おれだよ。おれ無事だから……なぁ、死ぬなよ……?」

 治癒の魔術な使い方なんて未だによく分からない。
 だけど、必死で。ただ、ひたすらコンラッドの体を治そうと、コンラッドに気力を取り戻せようと。

 光が爆発した。辺りを、コンラッドを包み込むように。
 先程とは違う、何処か温もりを感じるそれ。包まれたコンラッドの表情が何処か和らいでいく。

「コン、ラッド……?」
「坊っちゃん、大丈夫ですよ」
「ヨザック?」
「全部、傷口は塞がりましたから」

 ヨザックの言葉に、おれは彼を見た。
 本当にもう大丈夫なのだろうか。まともに魔術など使えないおれの魔術で、本当に治せているのだろうか。

「本、当?」
「ええ」
「おれ、コンラッドが……どうしようかと……!」
「大丈夫ですよ、坊っちゃん」

 浮かべられたヨザックの微笑に、本当に大丈夫なのだと理解して、へなへなと座り込んでしまう。手足が、体全部がガクガクと震えている。
 堪らなく、怖かった。怖くて怖くて、どうしようもなかった。


「それで、オレはまず何からしようかと悩んでるんですがねぇ」
「ヨザック?」
「そこのご令嬢の事から聞くべきか、どうしてこんな事になっているのか、まずどうしてコンラッドを撒いて一人で城下町を歩いたのか……ねぇ、坊っちゃん?」

 うーわー。どうしよう、おれ。
 コンラッドが無事だと分かると、ヨザックも何だか今回ばかりは容赦がない。
 勿論、それは当然の事だと納得してるけど。でも納得してるのと感情は勿論別な訳で……。

 ――とりあえず、まずおれは怒られた。
 おれに甘いヨザックだからそこまで酷いものじゃなかったけど。これがグウェンだったら、と考えるのも恐ろしい。
 でもって、次にシエラを紹介した。シエラが逃げてる理由はシエラの口から説明した。
 最後におれとコンラッドの間の事を話そうとして──コンラッドが目を覚ました。
 あれだけの傷を負って、途轍もない回復力だと思う。本当に大丈夫なのか確認しようとして、だけどおれは怖くて、コンラッドに視線を合わせる事が出来なかった。
 そんなおれの反応をどう思ったのか、それとも先にすべき事があるからかどうかは分からないが、おれに何も言わなかった、

「ヨザ、俺はそのご令嬢を家にお送りするからお前は陛下を頼む」
「え、隊長……?」
「反論はなしだ。そちらのご両親とて心配しているだろう」

 有無を言わせない、コンラッドの声。それは何処かいつもと違う様子だった。
 だけど、坊っちゃん、とヨザックに声を掛けれて、おれはそのままコンラッドと言葉を交わす事もなく、その場を離れた。





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あきゅろす。
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