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まるマ




「コンラッド、助けて!……ああ、アイツはもうおれに一体どうしろって言うんだよ…!」

 唐突に扉が開く音がして、この部屋の主であるコンラッドと、久しぶりにお邪魔しているオレは、そちらに視線を向けた。
 乱暴に扉を開け、入って来たのは陛下。
 他人の――コンラッドの部屋に入って来るのにノックが無いがないのは、来慣れているのか、それともそれだけ余裕が無かったのか。
 いや、まぁノックを必要とするような仲じゃないんだが。

「ユーリ、どうしたんですか、こんな夜に?まさかお一人で…」
「いや大丈夫!申し訳ないけど、ちゃんと護衛の人付いて来てくれてた」
「そうですか、それなら…」

 その言葉に、オレもコンラッドもほっと息を撫で下ろす。
 陛下はやたら護衛も付けずにその辺を出歩かれるから、もし何かあったらと気が気じゃない。幾ら言っても聞いてくれないし。

「そう、じゃなかった!もうヴォルフがさぁー」
「ヴォルフがどうしたんです?」
「またおれのベッドの中に居てさぁ、占領してんの。大の字になって」

 ダイノジとは何だと思ったが、とりあえずヴォルフラム閣下にベッドを占領されて逃げて来たらしいという事が分かった。
 しかも、「また」というからにはそれなりの頻度で起きている事態なのだろう。陛下御寵愛トトで「ヴォルフラム閣下が強引に押し切る」が人気な訳だ。

「それは全く困りましたね」
「だろ?いつもいつもさ!しかも何故かネグリジェ姿なんだ!」

 ネグリジェ?ヴォルフラム閣下がか?ネグリジェというと女性用の……。
 不思議そうに瞬きをしていると、陛下がこちらを向いた。


「そうだ、ヨザック、聞いてよ聞いてっ!」
「ええ、何です?」
「ヴォルフがさぁいつも寝る時、ネグリジェなんだよ!?男なのにさ!」
「それはまた…」
「しかも、フリフリピンクの!レースもリボンもたっぷり!」
「俺も小さい頃に、シンプルなやつなら着ているのは知ってましたけどね。この前にユーリと見た時には…」

 ああ、フリフリピンクのネグリジェで陛下のベッドの中に潜り込んでた訳か。しかも平然と。当然のように。
 ヴォルフラム閣下だからな、何となく想像が付いてしまった。
 きっと、「婚約者だから」どうのこうのと言い張っての事なんだろう。陛下は誤解だって言ってるのに。

「しかもさ、それがさぁ、異様に似合ってんだよ!ヴォルフが女の子だったらおれときめいちゃったかも知れないってくらい!」
「ときめいちゃったかも、ですか…」

 興奮気味に陛下は話すが、でもそれも分かるような気がする。
 綿菓子のようなハニーブロンドに、大きなエメラルドグリーンの瞳。女の子だって言っても通じるくらい可愛らしい顔で、体だって華奢だし。
 しかし、陛下の言葉を反芻するコンラッドは、聞き捨てならないといった様子だ。一緒にそれを見たとは言え、陛下の心情までは知らなかったらしい。
 明らかに嫉妬している様子だ。しかも、眉を寄せてまた何か考えてるよこの人。


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