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まるマ




「うぁー恥ずかしかったー」

 裏路地まで来ると、陛下はこれ以上ないというくらいに盛大な溜め息を漏らした。
 そして、公衆面前で何やるんだよ、つーか怪我しての治療ってあれが一般的な訳?などと真っ赤な顔でぶつぶつ呟いている。
 いや、一般的な筈がないじゃないですか。想像してみて下さいよ、コンラッドがオレに同じ事をする所を。……正直想像したくもないが。
 つまりは、間違いなく完全にアイツの趣味だ。しかも勿論陛下限定で。

「あ、出ちゃってた……傷付いたら大変だしな…」

 オレの心の中など知る由もない陛下は、首に掛かっているペンダントを摘まむと服の下へと入れた。
 先程転んだ時に服から出たのだろうが、本来服の下にあったものなのだろう。
 青い色の魔石。オレはそれに見覚えがある。以前コンラッドが常に大切に持っていたものだ。コンラッドが陛下に渡したのだろう。

「その魔石、大切になさってるんですね」
「うん!綺麗だし、コンラッドがくれたやつだし!」
「良かったです。大切にしてやって下さい、アイツの宝物……アイツにとって凄く大切なものでしたから」

 そんな陛下を見て、オレも安心する。
 あれは元々はスザナ・ジュリアのもので、コンラッドにとっては彼女から貰ったお守りのような――とても大切にしていたものだから。
 それを今度はアイツは陛下に渡した。お守りにと。そこにはとても大きな想いが詰まっているに違いない。

「コンラッドにとって?」
「ええ」
「どうして、そんなものおれに……」

 戸惑う陛下に苦笑が漏れる。
 貴方はコンラッドにとって途轍もなく大切な人なんですよ。誰よりも何よりも。
 貴方がコンラッドを変えた。オレにはそれが堪らなく嬉しい。
 一度死んだようなアイツが、また笑っている。自分の命よりも大切にしていたような魔石を貴方に託せている。
 貴方の傍らで、貴方の一挙一動に幸せそうに微笑んでいる。
 だから知っていて下さい。コンラッドにとって、貴方は誰よりも何よりも大切なのだと。そして、忘れないで下さい。

「大切だからでしょ、貴方が何よりも誰よりも大切だから」
「そっか…」

 陛下は嬉しそうに顔を綻ばせた。花の咲いたよりな愛らしい笑顔。
 ああ、本当にコンラッドが変わったのも分かるような気がする。
 昔から変なものに引っかかり易い所為で心配だったが、陛下がいるのなら大丈夫だろう。

 この陛下と同じ時代に生きられる事、陛下の時代をお守り出来る事、その光を浴びれる事、その笑顔を見れる事……堪らなく幸せで幸せで仕方ないと思う。



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あきゅろす。
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