B/M小説
01.引力には逆らえなくて
眠っているレイジのさらさらとした髪を梳くように撫でる。久しぶりに見た寝顔は相変わらずあどけない。
レイジはオレよりも先に眠ろうはしないから、その寝顔を見る為にはこうして寝た振りをするしかない。
「……俺だってお前が何処かに行っちまわないか不安なんだけどな」
目を閉じて思う。正直な所、その傍を離れようと思った事が無いと言えば嘘になる。
レイジはオレが隣にいる限りはいつまでも自分を責めるだろうから。いつまでも悲惨な過去を忘れる事は出来ないだろうから。闇に囚われ続けるレイジを解放してやるにはオレが離れるしかない。
しかし、それでもオレが離れてしまえばレイジは即座に壊れてしまうだろう。こうして笑ってはいるが、それはあまりに危うい均衡で保たれている。
(……まぁ、何よりオレが離れたくねぇんだけどな)
昔も――まだレイジがジーナローズ様を思っていた頃にも、同じように距離を置こうとした事がある。
だけど、やはり結局離れられなかった。離れようとするオレを何かが物凄い力で引き戻した。
離れられない。離れるつもりはない。切り捨てられない限りはいつまでもその隣にいよう。
END
2007.11.17
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