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B/M小説
03.伸ばした腕は空を舞い



 一度だけ、そう一度だけアイツもオレも手を伸ばした事がある。


「レイ……ジ?」

 人気の無い書庫の片隅、背を向けて僅かに肩を震わすアイツの姿があった。躊躇いがちに声を掛けるとアイツは反射的に振り返る。
 そして露わになったのは、赤く腫れた左頬。

「ど、どうしたんだそれっ!?」
「……何でも、ないっ」

 裏返るオレの声に、漸くそれに気付いたらしく慌てて手で頬を隠した。
 それでもオレがその事実を知った事には変わりなく。動揺する心で必死に思案を巡らすと、程なくして答えに辿り着く。

(……ジーナローズ様、か)

 ジーナローズ様が手を上げるなどとは意外ではあるが、何か人間に関して反抗をして叩かれたと言った所だろう。
 ジェネラルテンペストと呼ばれるコイツに手を上げられる人物など、他には思い当たらないのだから。それにそれならばこれ程弱々しい様子も納得がいく。


「レイ、ジ…」
「触るなっ!」

 赤く腫れた頬があまりに痛々しくて、オレは無意識の内にそっと手を伸ばしていた。
 それに気付いたのは、振り払われた手が痛んだからなのだが。

 そのレイジの行動は嫌悪からではなく、ジーナローズ様が触れた所を誰かに触れられたくなかったからなのだろう。
 しかし、逆にそれが胸に突き刺さった。コイツは優しさよりも痛みをとった。例え苦痛しか与えない存在だとしても。

 ジーナローズ様を前にしたコイツには、優しさなんてものは何の意味も持たないのだ。








END

2007.9.1

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真っ直ぐな瞳で見つめ、視界に入れるのはただ一人。
差し伸べた優しさすら手に取ってはもらえない。





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あきゅろす。
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