B/M小説
04.この温もりを守っていたいだけなのに 「なぁ、本当に行くのか?」 「ああ、その方が天使達の動きも分かるしな。なぁに心配するなよ、ちょっと偵察して来るだけだ」 悪魔の象徴である黒き翼を、天使の象徴であるそれで隠して。ギルは一人天界へ赴くと言うのだ。 壊した筈のゲートはいつの間にかまた作られたらしく、その動きが気になるからと自ら志願して来た。 「昔も行った事はあるんだ。そん時の方が内部事情を探るとか危険だったんだぜ?それに比べたら何て事はないさ」 和平か侵略かどちらかは分からないが。それでもメルディエズが言っていた言葉を覚えていながら、僅かにでも『和平』という単語を思い浮かべられるのはサファエルがいるからだ。 途中で別れたとはいえ、一時期でも仲間だった。だから知っている、彼女がどれほど平和を望んでいるか。種族など関係なく手と手を取り合える世の中を。 今なら分かる、あれほどまでに願っていた彼女の気持ちが。 ……どうか和平であって欲しい。 それは悪魔を束ねる立場の者としても、一個人としても変わらない。寧ろ個人的要素の方が強いかも知れない。 「な?だから行ってくるな」 こんな世の中でなければ、こうして不安に身を焦がしながら見送る事もないのだから。 END 2007.10.2 (例えばそれが多くの者へ不利益を生むとしても、それでも自分はこの幸福を手放したくはない。) ←→ [戻る] |