B/M小説
01.黄昏を想う心から
亡くなった兵士達にせめてもと心の中で手を合わせる。
無意味な事でしかないのだが流石にこの現状は悲惨過ぎた。それくらい、一方的になぶり殺されていると言っても良い状況で。
「何をやっているんだ、さっさと城へ帰るぞ」
「ああ、わりぃ!」
聞こえた声に、慌ててアイツの元に駆け寄る。この戦闘でのオレともう一人の生き残り。
「つか、レイジ傷凄いぞ!」
しかしアイツを視界に捉えたオレは仰天する。
ぼろぼろの衣服に、迸った鮮血は敵のものだけではないのだろう。その白い肌も傷だらけで。
お前もな、と言う呟きが聞こえたが敢えて無視し慌ててヒールを掛ける。コイツがぼろぼろになるくらいだ、オレにも他の誰かに余裕などある筈がない。当然だ。
ある程度は綺麗になるがそれでも多少は残っている。こんなアイツに今の今まで気付かなかった自分が腹立たしい。
(……ああ、)
これが、彼のお方――ジーナローズ様の「人間を殺さないで」という願いに従っている結果だ。
それさえ無ければコイツがこれ程までにぼろぼろになる事などないだろう。
こんな事をいつまで続けるのか、などという問いは愚問でしかない。
コイツはジーナローズ様が許すまで続けると言うだろう。その命が続く限り頑なに守るだろう。
そしてジーナローズ様は、いつまでもそれを許可する事なく願い続けるだろう。魔族が滅びるまで。
オレ達が思っているよりもきっとずっと終わりは近い。
END
2007.8.19
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終わりを知りながら尚も想い続けるのは愚者なのか勇者なのか。
それでも、何か大きな感情を抱くのには充分過ぎて。
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