B/M小説
礼状1.相談する相手は慎重に選ぶ事。
執務室で机に向かい、書類に目を通すレイジの瞳は、とても真剣なものだ。今日も頑張ってるな、とその姿を尻目にオレは部屋を出た。
天使や人間達とのことは解決し、一段落したものの、まだ色々と問題が山積みで大変だ。
だが、それでも、今の生活に不満は無い。サポートという形で少しでもレイジの役に立てているのだから。
オレがただ一方的に役に立っているのではなく、レイジもそれを知っていてくれる。気付いていてくれる。それは、どれほど幸せなことだろう。
「欲を言えば確かにオレの気持ちにも気付いて欲しいが、それはちと我が侭すぎるよな」
「そんなの言っちゃえばいいのよっ!」
「……はい?」
何気なく呟いたものに言葉が返ってきて、なんだとそちらに目を向けてみればウィディアがいた。腰に手を当てているその姿は、なんとも偉そうな態度に見える。
ずびし!と目の前に出された指が、目に入りそうで怖い。
「だーかーらー、言ったら気付いてもらえるじゃないの!」
様々な問題を排除し、当然のことのように言い切られ、深い溜息が零れる。
いつものことではあるが、前向き過ぎるというか、細かい事を気にしないというか、失敗した時の事を考えないというか……そう、まさに直突猛進という言葉がぴったりだ。言葉が出てこない。
「……お前じゃないんだから」
「何よそれッ! 意気地なし!」
呆れたように言葉を返せば、気に入らなかったらしい。その言葉尻が更に荒くなる。
「困るだろうが、色んな意味で。振られて、困るに決まってるだろ」
男同士なんだ。どうにかなんてなる筈がない。それなのに告白などしたら、気まずくなるに決まっている。
レイジはきっと気を使う。オレだってどうしていいか分からなくなるだろう。
今のままの関係は、もどかしくも切なくもあるが、何も失うこともなく幸せだ。そんな関係を壊してまで、それ以上何を望むというのだろう。
「平気よ! ジーナローズ様も連れて帰って来ない、私の事も振った、あの天使や人間にも興味がない……そしたらあんたしかいないじゃないっ! あんたしかいないのよっ!」
「なんだその屁理屈……」
失礼だと言わんばかりに憤慨しているが、ウィディアにそんな風に言われる筋合いはない。
まるで自分が振られた事が当たり前だと、正当化したいようにも聞こえる。
確かに、振られたのは可哀想だと思う。思うが、それと自分とはまた別の話の筈だ。
「ギル、命令よ! さっさとレイジとラブラブになっちゃいなさい!」
だが、唐突で横暴な命令を出すと、ウィディアは嵐のように去ってしまった。
零れそうになる溜息と頭痛に耐える。何だかよく分からないが、面倒なことになってしまった。
2010.10.31
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