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B/M小説
07.水の無い水槽



 苦しくて苦しくて、堪らない。息を吸う事すら億劫で。
 隣にいるウィディアを心配する事はできても、己の生命活動を維持する事は酷な事だった。


 悪魔達は皆、苦しみもがく。味わった事のない、あまりの虚脱感と己の弱った力に。
 今まで当たり前に供給されていた力の源を、断たれたのだ。それも極自然な事だ。
 同時に、ジーナローズ様が人間に討たれた、というのは唯一の希望を奪われたような気分でもあるのだろう。

(力など、)

 力など、魔力などどうでも良かった。苦戦はするが、まだ人間ならばどうにでもなる。
 この息苦しさは、そんなものが与えているのではない。そんなものなど、比べてしまえば甘すぎる。なんだと言うのだ。

(……レイジがいない。レイジが人間にやられた)

 オレの唯一絶対の主。何よりも大切で、失いたくないレイジ。
 これ以上の苦痛が、何処にあるというのだ。
「頼れる存在」を無くして嘆く者どもに、吐き気がする。自分の命くらい自分で守ればいい。それを「ジェネラル」という存在に頼り、レイジの手を煩わせるなど。


 レイジがいない。レイジがいない。
 戻って来るとは理解していても、どうしようもなかった。
 体に力が入らない。息を吸い、生命活動を維持する事すら億劫だ。

(……否、レイジのいない世界など―――、)


 瞳を閉じたそこからは、ひどく甘美な誘惑が押し寄せて来る。







END

2009.2.12








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あきゅろす。
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