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「ん……」

「あ、ごめん……起こしちまった」

「うん……あれ、寝てた?」


ぼんやりと数回瞬きをしてカシウスはゴシゴシと目を擦った。眠気はまだ消えないようで、小さく欠伸を噛み殺すようなしぐさをして、再び目を擦る。


「ミンティア食べるッスか?」


聞き耳がポケットを探る。いつも常備しているのか薄い容器に入れられたタブレットを取り出す。
カシウスは緩慢に頷き、少しだけ口を開けた。聞き耳が一粒つまんで差し出すとカシウスはそっと顔を近づけて聞き耳の指ごとついばむようにタブレットを舌に乗せた。指に触れた感触に、聞き耳の目が一瞬大きく見開かれる。だが驚いたのは何も彼だけではない。


「ッッ!!!」

「あ……辛い。……目、覚めたかも」


まだ半開きの目で、いつもの聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう言うカシウスの横で、ブルータスが石になって固まっていた。

まずったな、と聞き耳が目を逸らし、やや間を置いて再びブルータスの姿を見たときには彼はものすごい形相で聞き耳を睨み付けていた。


「お……俺、悪くないッスよ……」

「え?どうしたのぉ?」


ブルータスの気持ちを露ほどにも知らないイサベルは不思議そうな顔して二人を見比べる。
なぜだか焦っている聞き耳と、なぜだか異様に怒っているらしいブルータス。そしてミンティアを口の中で転がしながら辛いのか目をぎゅっと瞑っていてほかの二人の様子には微塵にも気付いていないらしいカシウス。


「え?どういう空気?もしかして私、空気読めてない?」

「……なんでもねーよっ!イサベル、あとでちょっとこい」

「え?えぇ?何でぇ?」




(あーあ……)


聞き耳のカシウスへの気持ちは知らないはずなのに、あれ以来自分達の仲が公認だと思っているのか、全くやきもちを隠そうとしないブルータスを厄介に思いつつ、しばらくは手を洗えないな、なんて考えてため息を一つ。思わず口の端があがってしまったらしい自分の姿が反対側の窓に映っているのを見て、聞き耳はまた別の種類のため息を吐くのだった。







「ねぇねぇ、何なの?」


全くわけがわからない、と首をかしげながら問いかけたイサベルをブルータスがキッと見据える。その鋭い視線に短く悲鳴を上げて思わず一歩下がったイサベルにブルータスが更に一歩近づく。


「な、何よ」

「お前、あれさ、あれ……焼き増しとけよ」

「はぁ?」

「あれだよ、あれ!カシウスの!」

「え?あ、あぁ。いいわよ」


どうやら先ほど撮ったカシウスの寝顔の写真のことらしい。でもなんでまた、と口を開きかけたが、ブルータスの有無を言わさない眼光にその言葉は押しとどめられた。


「あと!あれ、他の奴に見せるなよ!いいな!」

「わ、わかったわよ……」


絶対だぞ、と念押しして去って行くブルータスの後姿を見つめて、ありゃポルキアでも無理だわ、とイサベルは心の中で呆れの混じった嘆息をもらすのだった。






‐END‐

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あきゅろす。
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