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第一話






近くに住んでる親戚のシーフォ家に来た私は、フレンの部屋でお菓子をかじっていた。




「フレン、話ってなに?」

「うん、なまえはバイトを探してるって言ってたね?見つかったかい?」



その話か、と思わず大きなため息が出た。
最近それで悩んでる私はもう“バイト”という言葉を耳にしたくないくらいだった。

正直、働かなくても良いならバイトとかしたくない、ホントに。


そんな私を見て顔に出ていたのか机の椅子に座ってたフレンが床に座ってる私の向かいに胡座をかく。




「その様子だと、まだみたいだね」

「……悪い?」

「そうは言ってないよ」



にこやかに笑ってる彼が憎たらしい。けど事実だから下手なことは言えない。




「ニートは楽しいかい?」

「……」

「もう卒業してから二年経つ、」

「解ってると思うけどバイトは前に一度したからね」

「長くは続かなかったけどね」




あーもう、何も言うまい。
フレンだってしてないじゃん、って言いたいところだけど、彼は学生だ。
弁護士を目指し、勉学に励んでいる。一時期は何かの評論家になるとか、政治家になるとか。

兎に角お堅い目標がある限り、バイトなんてする暇がないみたい。




「君はこのまま堕落したいのか?」

「別にそんなんじゃ」

「君が大学に入っているなら言わないよ、」



けれど、私を説教する時間はあるらしい。

暫く耳が痛い話が続いて私はお茶を一気に飲み干す。




「そこで君に朗報だ」

「…んー?」

「僕の幼馴染みが働いてる所でバイトの求人をしているんだ」

「…ん」

「なまえ、そこで働きなよ」

「…ん……、って、はっ?」




急な話にフレンを凝視すれば、相変わらずの笑顔で私を見てる。

訳もわからず、少し固まっていたら、衝撃的な言葉まで頂いてしまった。




「もうなまえの事は話してあるから明後日から働きに来いって、」

「ちょ、ちょっと待って。何勝手に」

「こうでもしないと君は中々決めないだろう」



だからって横暴だ。私が働くなんてそんな、…。
前働いてた所で散々な目にあったから二度とバイトなんかするかって思ってたのに。

よりによってこの陰険な従兄に勝手に決められてしまうなんて。





「あのねっ、今すぐ断ってよ。私もう未成年じゃないんだから勝手に、」

「決めないで、って?そうなると君はフラフラしっぱなしって訳だ」

「………」

「大丈夫だよ。彼はあれでいい奴だし、君が前働いてた時のようなことは起きない筈だ」



そんなこと言われたって、簡単にトラウマがなくなる訳じゃないのに。

けど、フレンがこういう風に言うってことは、彼の幼馴染みはとても良い人みたいだし、思いきってやってみようかな。





「わかった…」

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「でもどんな人なの?私会ったことある?」

「ユーリって言ってね、小さい頃一度会ってると思ったんだけど」



ゆーり?聞き覚えあるようなないような…。

いくら記憶を遡っても思い出せない。フレンの勘違いじゃ、…。でも小さい頃って言うし、単純に私が忘れてるだけかも。




「で、どんな仕事?」

「確か、レンタルショップ」

「CDとかDVDの?」

「と思う」



何でそんなに曖昧なのこの人。

まあレンタルショップなら何とか大丈夫かな。





「場所は?」

「ちょっと待っててくれ。今紙に簡単な地図を書くから」




五分ぐらいが断ち、フレンはメモ用紙を折って渡してきた。

あれ、意外と私の家から近い。





「僕は行ったこと無いけどそこで合ってる筈だよ」

「…本当に大丈夫なの?、これ」

「ああ」



行ったことがないのか。
だからかな。急に不安になってきたんですけど。

ここはフレンを信じることにしてその日は帰った。








明後日か、…と思っていれば、時間はあっという間に過ぎるもので、約束の日になった。

準備をして地図に書いてある目的地を目指すと、到着した。すんなりと。


けれど私の足はすんなりと中へ入ろうとしない。

だって、





「おっ、お前がなまえか?」

「ひぇっ!、は、はいっ」



突然後ろから声をかけられて、驚いて情けない声をあげてしまった。

振り向くと長髪の男性が可笑しそうに笑いながら立っいる。
エプロンを着てコンビニのビニール袋を下げて。





「声が見事に裏返ったな」

「〜〜〜っ」

「ま、入れよ。仕事内容教えるから」

「え、あのっ」




ぐいぐい背中を押され中に入るとカウンターまで連れていかれた。その間私は目を必死に閉じていた。





「おーい、何で目を閉じてんだ?」

「み、見ないように」

「何を」

「…店内の物を」

「は?…あー、なるほどな」



理解してくれたか。私が目を開けない理由。それは




「ここ、全部やらしいのしか置いてないもんな」

「…………」




そうアダルトなんたらというやつだ。

フレン、あんたは本当に知らなかったの?もし知ってて私をここに送ったんなら質悪いからね。




「少しずつ慣れるだろ」

「…帰って良いですか?」

「ダーメーだ。いい加減目を開けろ」



ジワジワと目を開けるとユーリ…さん、が覗き込んでいた。





「あの、顔近いです」

「あ、わり」





20130309









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