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れもな様へ 五万打企画





 初めに言っておく。私はジェイとは正反対だ。
ジェイみたいに、頭の回転も良いわけでもないし、言葉選びも下手だし、空気が読めないのかやる事成す事全部が裏目に出る。

 今回もそうだ。




「どうしよう…。」




いつも依頼の仕事から除け者にされる。だから、たまには私を頼ってよ!、って無理にお願いして漸く貰った仕事なのにいきなりしでかしてしまった。調べて得た情報が全くもって違ってた。しかも知ったのはついさっきで、もう手遅れだった。
 何が手遅れだというと、その情報を持ったままジェイはもう既に依頼をこなしに行ったからだ。今になってジェイが帰るまできっとこの嫌な汗は止まらないし、下手したら相手にやられるかもしれない。いやいや、ジェイは強いもん。そんな簡単に負けないよね。


頭がパンクしそうな中、扉の開く音がして体が跳ね上がった。




「ただいまキュー。」

「キュッポ…。お、おかえり…。」





ジェイじゃなかった。と、安心して胸を撫で下ろした時、キュッポが扉を閉める前にギギッと音を立ててまた開く。





「ただいま戻りました。」

「…!」

「ジェイ!?どうしたんだキュ!?」





キュッポと私は目を見開いて戻ってきたジェイに釘付けになった。だって、傷だらけでボロボロになってたから。私は最悪な予感が的中したんだと理解した。

 どうしよう、私のせいだ。私が間違った情報をあげたから。謝らないと…、ジェイに謝らないと。そう思うのに混乱しそうな私はそれが上手く口にできず、




「あの、…ジェイっ、私、」

「ふぁーすとさん、ちょっと良いですか?」




やっとの思いで謝ろうとしたら、ジェイに遮られた。こうなればもう従う他ないからジェイのあとを付いていく。

 着いた場所はジェイと私の寝室。ボロボロのままベッドに座り込んだジェイの顔には、笑顔はなく、ただ私に鋭い視線を送ってきた。
耐えられずに俯いたところで、ジェイの声が耳に入ってくる。





「ふぁーすと、貴女から貰った情報が大幅に違っていたんですが、どういう事です?」

「そ、その…、間違ってた事にさっき気づいて…。本当にごめんなさい…。」

「貴女言いましたよね?頼ってくれと。その結果がこれですか。」




何も言えず、唇を噛む。こんなはずじゃなかったのに。





「…。もういいです。下に戻っていいですよ。」

「ジェイ…、本当にごめんなさい。」

「いいですよ。口ではなんとでも言えますから。着替えるんで下に行ってください。」





頭が真っ白になった。言われて仕方がないことだけど、流石にへこむわけで。
そうだっ。ジェイの次の依頼に役立つ情報を集めよう。このままだとジェイに申し訳ないし、それに彼の負担も少なくなるはず。

けど、今回の事があったから、はい良いですよ、なんてすんなりジェイがオーケーしてくれるわけがない。
こうなったら…。




 みんなが寝静まった後、こっそりジェイの依頼書を引き出しから漁ってみた。明後日の日付で情報収集とメモをされている書類を見つけた。
よし、これにしよう。これを明日私が情報を集めてジェイをビックリさせよう。



夜が明けて早速、街や森に情報を掻き集めに行った。…のは良いものの。





「やああああああ!」




戦闘能力が乏しい私は魔物に追いかけられてた。必死に走ってる最中、足元が縺れて思い切り転んだ。

どうしよう!このままじゃやられる!足が痛くて逃げようがない私は目を瞑ったら、誰かの足音が凄い勢いでこっちに向かってくる。




「魔神拳っ!」
「魔神剣っ!」



来るはずの痛みが来ないことを不思議に思いつつ、目を開けるとそこに知ってる二人が立っていた。




「クロエっ、セネル!」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。二人ともありがとう。」



態勢を整えて座り込みながらにへらと笑ってみせると、安心したみたいに息を吐く二人。クロエが手を差し伸べてくれたから甘えて手を握って立ち上がると、よろめいてしまった。

支えてくれたクロエは私の足を見た。





「ふぁーすとっ、怪我してるじゃないか!」

「ごめんクロエ。大丈夫だから…、つっ!」

「どこが大丈夫なんだよ。ほら、おぶってやるから乗れ。」




セネルが私の前に屈んでくれたけど、私はそれを断った。だけどそれを良しとしないのがこの二人だ。





「クーリッジの言うとおりだ。今は意地を張らずに素直に言うことを聞いてくれ。」

「…うん。ごめんね?二人とも。」




申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらもセネルにおぶってもらって村に帰った。家に着くとみんな出かけてるみたいで誰もいない。

ゆっくりと降ろしてもらって絨毯の上に座らされた。





「誰もいないみたいだな。戻ってくるまで側についてよう。」

「ああ、そうだな。」

「え?いいよ二人とも!これ以上は迷惑かけられないよ。」

「今日は甘えてくれ。まず足の治療をしないと。」





クロエはそう言いながら私の履いてた靴を脱がせて、足の状態を見てくれた。本当にお姉さんって感じだな。





「少し捻ったみたいだな。膝も擦りむいている。」

「全然大丈夫じゃないじゃないか。」

「あはは、ごめんね。なんか…私、みんなに謝ってばかり。」




特にジェイにはいつも謝ってるな…。

私の顔に出てたのか、クロエは気を利かせて話題をそらしてくれた。…のは良いんだけど。




「ところで、ジェイとはどうなんだ?」

「え…っと。」





思わず言葉が出ない。昨日失敗して叱られた。その前も些細なことで叱られた。…私ってジェイにとって何なんだろう。

余計にクロエを困らせてるのが、物凄く伝わってきてまた笑って見せた。




「もう今日は遅いから、二人とも泊って行ってよ。たぶんキュッポ達帰ってこないし。」




ぽかんとしている二人に、ね?と笑う。




「分かったよ。クロエ今日はここに泊まろう。」

「そうだな。何も危険な時間帯に出歩く事も無いだろう。」




「そうそう。もう暗いですし。」




あれ、今の声…。慌てて扉を見るとジェイが立っていた。とっさに集めた情報の載ったメモを鞄に押し込んだ。彼は怪訝そうに私を見たあとに、セネルとクロエを申し訳なさそうに見る。






「すみません。ふぁーすとがまたご迷惑を。」

「いや、良いんだ。私たちも暇をしていてパトロールしていただけだからな。」

「ああ。そしたら森でふぁーすとが魔物に、」




今の会話に疑問を持ったのかジェイが遮った。




「…森?何でまた森なんか、」




動揺しながらも必死に隠そうと言葉を探すが何も見つからない。どうしよう。変に怪しまれる。そう思った矢先だった。





「ま、ふぁーすとの事ですから美味しい木の実が成ってるとか思って森に行ったんじゃないんですか?」





ジェイが勘違いをしてくれた。本当に助かった。情報は明日渡そうと思ってたし、今はちょっと気まずいし…二人もいるしね。




「そ…そうなの!あはは…。」





黙って見ていたクロエは、何かに違和感を持ったようだけど何も言わずに私の足に薬を塗ったりしてくれて、セネルと一緒に夕飯の支度を始めた。

未だに絨毯の上で安静にしてる私は鞄を膝の上に乗せて、明日のジェイの驚いた顔を想像すると顔がゆるむ。




「捻挫ですか。」

「うん。でも平気だよ。クロエが色々してくれたから。」





そうですか、と一言残して二人の所へ行ってしまった。そんな彼をただ黙って後ろから眺めていた。







 翌日、足は昨日より歩けるようになって一階へと降りた。ジェイは情報収集のため家を出るところだったから呼び止めると、実に鬱陶しそうに見てきた。




「なんですか?いつもなら寝てる時間でしょう。」

「ジェイ、大丈夫だよっ。その依頼の情報なら私が昨日集めてきたの。」




そう言いながら私はメモを渡そうとしたら、彼は受け取ろうとしない。その上明らかに怒った表情だ。





「はい?ふぁーすとが情報を?」

「そうなの…。この前の事もあったし、だから、」

「だからそんな怪我したんですか?」

「えと、うん。でも、」

「ぼくにも迷惑をかけて、更にはクロエさんたちにも迷惑かけてるの分かってます?」





言われた瞬間固まってしまった。だって、こんな風に言われるなんて思ってなかったから。差し出したメモを自分の胸の前まで引いて、いつものように俯いた。




「情報が誤っていてぼくが困った。次はセネルさんたちまで。そんな信用性の無いものの為に。」

「信用性が…ない?」

「だってそうでしょう。貴女は一回目でミスをした。そんな貴女が集めた情報なんて、このぼくが当てにする訳が無いでしょう。信用できるはずがない。」

「そんな…。」




そんな、ひどいよ。…私だって…。思わず涙が目に溜まる。そしてジェイを睨んだ。





「信用できないとか…そんな風に言わなくてもいいじゃないっ…。私だって頑張ったんだよっ?」




少しだってジェイの為になる事をしたかっただけなのに…。どうして…。




「私が集めた情報読んでもないくせに偉そうに言うな!!そんなに私が迷惑な存在ならここから居なくなるっ!」

「ふぁーすと!」






少し足を引きずりながらも村を飛び出した。

知らない知らないっ。もう色んなことをジェイの為になんかするもんか。私が居ない方が良いなら出ていくわよ。

気づけば街の噴水広場に座り込んでた。軽く放心状態だ。なんだっけ…。私は信頼できない人なんだっけ?





「私…いらないや…。」




ただ邪魔なだけなら、迷惑の塊でしかないなら。あの村から、この街から、この遺跡船から、…ジェイから、。




「わた、し…いら…な…っ。」

「なーにそがぁなこときにしとるんじゃお嬢。」





突然現れた仲間の一人、満面の笑顔でモーゼスが目の前にいた。そんな彼を見た私は崩れるように泣きつく。級の事でモーゼスは一瞬態勢を崩しかけたけど、しっかり踏ん張ってくれて頭をポンポンしてくれた。





「なんがあったか知らねーけど、そがぁ泣くことねーぞ?な?」

「モーゼスっ…、私…要らないかな?要らないよねっ?誰にも、何処にも、ジェイにもいらないよねー…?」

「…なんや、痴話喧嘩でもしたんか?にしても、そうは思わねーぞ?」

「だってジェイはいつまでたってもわた、」

「あだぁっ!!!」



モーゼスが急に悲鳴を上げた。目を丸くしてモーゼスを見上げると頭を押さえている。




「手を退けてくれませんか?…バカ山賊。」

「ジェー坊テメェ何して、」

「二度は言いませんよ?モーゼスさん。」





ジェイの言うとおり、モーゼスは手を頭から退けた、あと更に体を離した。きっとまたジェイに攻撃されると思ってるんだろうな。





「全く、泣いて逃げたかと思えば浮気ですか、ふぁーすと。」

「ち、違うもん…。それにもうジェイの所なんか戻らない…し…、。」

「へー…。バカ山賊はとっとと失せてください。邪魔です。」

「ひでー言われようじゃな。たく、お嬢はすんすん泣いとるしジェー坊も大概にせえよ。」





モーゼスはとぼとぼ階段を下りて行って姿が見えなくなったのを横目で見てた。前にいるジェイなんて見えないように俯いて手の甲で何度も涙を拭う。いったいどんな表情でジェイは見てるんだろう?怒ってる?呆れてる?どれにしたって今はジェイの顔を見れない。

そうやって黙って泣いていたら頭にこつんと何かが当てられた。チラッと視線を移すと、目の前にジェイがいる。彼が頭をつけてきたんだと分かった瞬間、顔が余計に熱くなった。




「ごめん、…ふぁーすと。」




ぽつんと彼から聞こえた言葉に涙が引いてくる。





「怒りに、…来たんじゃないの?」

「まさか。クロエさんに怒られたんだ。ジェイは女心を何もわかっていないってね。それと、…ふぁーすとにあんな風に言われた事も無かったし、その…ぼくの傍から居なくなると思って凄く動揺した。」






言われた瞬間に胸の辺りがキューってなってそのあとじんわりと温かくなった。ジェイが謝ってくれるなんて夢にも見なかったから。




「ジェイは…、私の事、……その、。」

「…。」




恋人の筈なのに馬鹿な質問かな?なかなか最後まで言えずにいると、ジェイは頭をつけたまま暫く口を開いてくれない。どうしよう、困らせてる?顏が見えない分、不安が募った。




「好きだよ。」




…え?

思わず顔を上げると目の前には、普段色白の顔が真っ赤に染まっているの彼がいた。




「ちょ、何顔を上げて、」

「ほんとに?」




食い気味で言葉を遮った私に彼がぽかんとする。





「ほんとに、私の事。」

「好きに決まってるでしょう。…そういうふぁーすとはどうな、」

「好きっ、大好きだよっ。ジェイが好き!」





そう言いながら思い切り抱き着いた。あれ、なんだか涙が出てきた…。





「ふぁーすと、…さっきはごめん。本当に。だからそんなに泣かないで下さい。」

「ジェイ、私もっと頑張るから…っ。」

「…いいよ。ふぁーすとが頑張ってる事分かってるつもりだから。」




泣きながらジェイに好き好き言っていたら、頭を撫でてくれた。
それ以降暫く、噴水広場のバカップルと街の人から言われ続けたのはまた別の話。








「ふぁーすとが集めた情報、見せて。見る前に色々言ったからちゃんと見たい。」
「うん。これだよ。」
「……。」
「どう、かな?」
「…今日は僕と一緒に情報集めましょうか。」
「え、違ったの?ジェイ?」
「さ、行きましょう。」
「ごめんなさーいっ。」







20160905

ほんっっっっとうに!遅くなってしまいすみませんでした!喧嘩で仲直り。如何でしたでしょうか?随分前に下書きをしていた分があったのですが、すべて書き直しました。にしてもモーゼスの口調が分からないです、ごめんなさい。そしてリクエストありがとうございました!









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