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詩乃様へ 五万打企画








「デーゼルっ」

「おわっ!離せ!」


程々に疲れた頃、各自その場で休憩をする事になった導師一行。一人遠くを眺めるように腕を組みながら立っているデゼル。その背後から忍び足で飛びついたロゼではない女性。最近仲間になったふぁーすとだ。
急な奇行にうんざりしつつ背中からしがみついているそれを、剥がすように払いのけた。



「いつもいつも!何のつもりだっ、ふぁーすと!」

「ん?…えーと、そうだなぁ。強いて言うなら帽子をかぶってみたいの!」

「嘘つけ!」



まさに今思いついたかのような物言いで親指を立ててきたふぁーすとを警戒しながら一定の距離を保つ。それでも懲りずにデゼルにじりじりとその距離を縮ませていこうとする彼女に彼は舌打ちをした。




「何で逃げるのー?」

「お前が寄ってくるからだっ」

「スキンシップじゃない。ケチケチしないでさー」




そんな時だった。ロゼの所へと逃げて行った。風のように。それがふぁーすと自身をこうさせる事に拍車をかけている事に彼自身は気づいていないようだ。何故ロゼの側は良くて自分はダメなんだと心底納得のいかないふぁーすとだが、彼にそうやってちょっかいをかける行為が原因だと、また彼女も知らない。

始めはあるものを見たくて帽子をはぎ取ろうとしたのが始まりだった。それからエスカレートしていったのだ。




「ロゼはいいな」

「何がいいんですか?」

「だっていつもデゼルと一緒じゃない」




その言葉に目を輝かせたライラは少し息を荒げてるように思えたふぁーすとだったが、敢えてそこには触れず、言葉を続ける。





「あんなに近くであの位置だったら絶対に見えるよね…」

「え、何がです?何がですかっ?是非この私にも詳しくお話ししてください!」





とうとう興奮したライラに対し、冷静に「別に何でもないの」と一言告げて持っていた水筒の水を二口ほど喉の奥へと流していった。


日も暮れ宿の部屋でそれぞれ好きな事をしてのんびりしていた。ふぁーすとはそんな部屋の光景をベッドの上から胡坐をかきながらぼうっと眺めてそっと外に出ていく。




「きれーい」




空を見て、星を見て。そんな事をするのが彼女の好きな事だった。綺麗で感動的なものを好む彼女はそれさえ見れれば満たされるのだ。





「こんな夜にそんな薄着で風邪ひくぞ」

「あれ、デゼル?」

「ふん」





珍しい。ふぁーすとが正直に思ったことだった。けれどやはり一定の距離は保ってくる。






「星ってきれいだよね」

「…そうか」

「なに?その微妙な反応はっ」

「見たくても見えないもんでな」





その時、彼女の中で一瞬時が止まった様な気がした。最近仲間に入った故にその事実は知らなかった。





「うそ」

「うっせーな。俺はもう戻る。お前もさっさと戻れよ」





目の前から消えた彼に少し申し訳ない気持ちでまた空を見上げる。こんなきれいな空を見れないのか。少しもったいない。いや、だいぶもったいない。ただ夜風の気持ち良さに目を閉じる。







「おっはよーデゼル!」

「…っと」






日が昇り早速ふぁーすとをヒョイと避けたデゼルはふっとしてやったりと笑みを浮かべた。





「今日はきれいに避けたな」

「にしてもデゼルに執着する理由はなんなんだ?いくら考えてもわからないな」





そんな会話をしている導師とその幼馴染は何とも不思議そうに手を伸ばして飛び跳ねている彼女を見ていた。
出発してすぐに戦闘が始まると前線で張り切って戦うふぁーすとと導師たちは、余裕を見せながら勝利を予想した。




「これで終わり!…っとぉ!?」




とどめを刺そうとしたのはふぁーすと。だが、最後の一発が間に合わず強い力で吹き飛ばされた。そのまま地面に叩き落とされる。誰もがそう思った刹那、





「ぐっ…!!」

「きゃ…っ」




デゼルがふぁーすとを颯爽と受け止めようとした。勢いが勢いだったため、完璧に受け止められず、彼女がデゼルを押し倒すように倒れこんだのだが。

態勢を整えようとデゼルの胸からゆっくりと顔を上げると、目を見開いた。と同時に嬉しそうに微笑んで今度は抱き付きながら声を漏らす。





「漸く見れた」

「お、おい。何してんだ?早く退け」

「やっと見れたよっ」

「だから何がだよっ」

「デゼルの目」





2人の間に少し沈黙が流れる。が、なんとなく今までの事が分かった気がした彼。そう、ただ彼女は普段見れない彼の瞳を見てみたかったのだ。




「いいからそこをっ、」

「思った通り、きれいな目」

「っ…、〜〜〜っくそ…」





デゼルは倒れているまま帽子を整え、目がまた隠れてしまった。そうすればやはり引き下がらないのがふぁーすとで必死に見ようと彼の上でじたばたと動く。その光景はどことなく、





「うわ!デゼルが照れてる!ふふふ〜なーんか、彼氏彼女って感じー?」

「本当ですわね。微笑ましいですわ」




そういう風に見えてしまうのだった。





「で、いつからそんな関係なのかしら?」

「言ってくれればよかったのにな」

「ちげーよ!!!」





それからは素直にふぁーすとに瞳を見せるようになったとかならなかったとか。








「デゼルー、ここ座って」
「っち…仕方ねーな…」
「ふふ、やっぱりデゼルの目好きだなー」
「お、…おう…」

「やけに素直ね。不気味だわ」
「なんだか平和って感じ」






20150401

大変お待たせいたしました!ちょっと忙しさに追われてしまって。
デゼルのほのぼのということで、こんな感じにしてみました!犬の話かこの話どっちが良いかなと思った末こちらに致しました。
リクエストして頂きありがとう御座いました!
これからも遊びに来てくださいね^^






あきゅろす。
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