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りん様へ 五万打企画





「スレーイっ」



手を振りながら芝生の上に座り込んでいる彼に駆け寄った。彼は彼で落ち着いた趣でこちらに振り向いてくれた。



「ミクリオがこれ作ってくれたよ、ほら」

「アイスキャンディか。あいつの得意料理だな」

「料理って言うの?これ」



顔を見合わせてけらけらと笑いあう。仲間の一人の天族であるミクリオをネタに他愛の無い会話を続けた。彼に出会ってから何かと色んな事に巻き込まれて世界の見方が変わった気がする。スレイだって導師として大変だ。始めの内こそ張り切っていたものの、今ではすっかり軸がぶれない様に慎重になって行動してる。

そんな中、少しくらい寄り道したって、という流れになってこういう自由な時間を設けた。あえて導師の服を脱いでいる事には触れない。きっと今は彼にとってただの一人の男性に戻っているんだ。だからこそ触れない。

アイスキャンディを咥えて芝生に寝転んだ彼を、じっと眺めた。ふぁーと欠伸をして、スレイの片腕を無理に横に伸ばした。
不思議そうに私を見上げていたスレイを構わず、そのまま彼の腕に頭を乗せて寝転んだ。




「重いぞー」

「女の子にはタブーな言葉だよ?解ってないね、スレイは」



しかも頭だけなのにケチケチしないの、って笑って見せたら、彼もふざけてうだうだものを言う。



「んー、オレンジ」

「何が?」

「私のアイスキャンディの味」

「ふーん、俺はピーチ味だ」




咥えたままの会話、なんてだらしが無いんだと言われても文句は言えないのだけれど、こんな機会滅多にないから、思いっきり羽を伸ばす。スレイだってそれを望んでるはずだしね。



「空、青いね」

「ああ、…それに広いな」

「うん」



二人でただ空を眺めた。これはいつまで続けられるかな?不意に切ない気持ちが一瞬だけ私を埋め尽くす。けれど横目でチラッと見るスレイは気持ちよさそうにそよ風に吹かれていた。そんなスレイを見たらまたどうでもよくなった。




「スレイって遺跡とか好きだよね」

「うん、歴史に関係あるもの、全部好きだ!」

「そ、そう」

「ふぁーすともどうだ?結構楽しいぞ?」




そんなキラキラした目で見られても、遺跡なんて生きてこの方縁が無かったし返答に困った。




「あ、絶対面白くないって思っただろ」

「あれ、バレた?」

「そんなに興味持てないものか?遺跡とか傾いた建物とか。貴重なのに」

「スレイ、間違ってるよ。私は少なくとも興味はあるよ。けどね、スレイたちの熱の入れようがおかしいの」



中々無くならないアイスキャンディを軽く振りながら間隣の彼に訴えた。そもそも石版が近くにあるのまで察知してしまうなんて何かの病気じゃないのか始めの内は本気で疑ってしまったくらいだ。

スレイはむうっとした顔でアイスキャンディを咥えたままこちらを見た。




「何よ、その目」

「俺達の探検魂を解ってくれないふぁーすとを非難してる目」

「どんな目よ」

「こんな目だよ、ほら、よく見てろよ」



どんどんそんな目で顔を近づけてくるから、少し恥ずかしくなって片手で顔を押しのける。



「ははは、照れてる」

「煩いなあ、もう」



照れないわけが無いだろう。私は彼が好きなんだから。この間だってそれとなく伝えたのに彼は、そっかありがとうと、それだけだった。それだけの言葉で私の一斉一世の告白が水に流された気分だった。
けれど、それは導師だからなのか、それとも本当に鈍感だからか、よく解らない。
まあ、こうやって彼とふざけ合えるならそれでも構わないと思ってしまう。




「かわいくないな、全く」

「スレイだって鈍感の遺跡マニアの癖に」

「なーにー?」



枕にしていた腕を曲げられて頭がスレイのほうにずれてそのままぎゅーっと抱きしめられた。



「そんな事言うと答えてやらないぞ」

「え?何が……って、あああああ!」

「えっ、なに?」



慌てて起き上がり、咥えていたはずのアイスキャンディを手探りで探すとスレイと私の隙間から芝生の上に落ちていた。



「私の、…私のアイスキャンディ!」

「あちゃ」

「あちゃじゃない!元はといえばスレイが腕曲げるから!」



スレイも起き上がり、胡坐をかいた。私は私ですっかり汚れたアイスキャンディを手に取り、落胆の声を漏らす。




「ミクリオの所に行って水で洗ってもらおうかな…」

「ミクリオの所にか?」

「うん」

「んー、じゃあ、はい」

「…んぐっ」




私の口に広がる冷たい冷気とピーチの味。そう、これはスレイが舐めていたものだ。




「それやるからここに居よう?な!」

「…〜〜〜っ」



何が起きたのか一瞬わからず、真っ赤になりながら目を見開き彼を見た。にこにこな満面な笑みでそんな私を見てきたスレイには一生敵いっこないと身に沁みたのだった。





「おいしいか?」
「お、おいしい……です」
「ははは、カワイイな」
「軽々しくそんな事言わないでもう!」
「ははは」

「微笑ましいな」
「ミクリオさん、自分も入りたくてうずうずしてらっしゃいます?」「なっ…!」







20150308


リクエストありがとう御座いました!ほのぼので甘くしてみましたっ。…出来ているのかとても不安ですが←
なんだかよくアイスキャンディを作ってくれるな、みんな。なんて思いましてこの作品を書かせていただきました!
本当にありがとう御座いました!







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