未華様へ 五万打企画
「よく頑張ったと思うよ」
「…っ」
おやつ作りを失敗したと落ち込んでいたふぁーすとの頭をポンポンと撫でてあげたら彼女は顔を上げて僕を見てきた。目を丸くして顔も真っ赤だ。
「大丈夫か?発熱とかじゃ、」
「う、ううん!違うの!ま…不味くなかった?」
「これくらいなら平気だよ」
「よ、良かった…。わ、私、顔洗ってくるっ」
何故か逃げるようにこの場から去ったふぁーすとをただ不思議そうに見ていたら、つんつんと脇腹に嫌な刺激が走る。その刺激を与える本人に止めろとは言わない。言ったところで止めてはくれないからな。
「なに、エドナ」
「ミボの癖に中々やるわね。ポイント稼ぎにしては上出来じゃない?」
いったい何の話をしているんだ。そう思いながらエドナを見下ろす。
「ふぁーすとも満更ではないようだし、一応応援だけはしといてあげるわ」
「なんだかムカつく言い方だな。大体何を応援、」
「自分で気付いてないなんてやっぱりミボね」
それはそれで面白いからいいけど、とニヤリと細く微笑むエドナに悪寒を感じた。この天族は質(タチ)が悪い、本当に。するとスレイに何かを伝えている。
「ふぁーすとに?」
「そう、ふぁーすとに」
「よく解らないけど解ったよ」
何だ?ふぁーすとが何だって?よく聞こえなかった。そしたらスレイは戻ってきたふぁーすとを呼び寄せて、頭を撫で…始めた。
「な…スレイのヤツっ…」
何を焦ったのか僕は、ズカズカと二人によっていく。
「ふぁーすと、髪の毛サラサラだな」
「そんな事ないよ」
サラサラだって?僕だってそんな事言ってないし気付かなかったのに。
訳の解らないイライラと共に二人の間に入って距離を取らせた。
「あれ、ミクリオ?どうした?」
「悪いなスレイ。ちょっとふぁーすと借りるよ」
スレイの返事も聞かないまま、状況が飲み込めずに困り果てているふぁーすとの手を引いて林の奥に行くと足を止めた。
「ミ、ミクリオ?どうかしたの?」
背中から聞こえるふぁーすとの声。なんだか今になってこの感覚に気付くとは自分も不思議でたまらない。無性にふぁーすとを誰かに触れられるのが嫌だって思ったんだ。
「ふぁーすとの事僕だってよく知ってる」
「へ?」
「子ども好きって事も自然を愛でてる事も仲間想いだって事も」
「ちょっと、ミクリオ?」
「誰かが怪我をすれば心配しすぎて泣きそうになるし、夜は抱き枕がないと眠れないって事も、」
「ねえっ」
その時はっとした。肩に手を乗せ僕の顔を心配そうに覗き込んでくるふぁーすと。そんな彼女に少し落ち着こうと言葉をとめた。
小さく揺れているその瞳は、やっぱり心配そうで溜まらず声を振り絞って言った。
「僕は、…ふぁーすとが……好き、なんだ…」
消えてしまいそうな声で確かにそう言った僕に目の前の彼女はさらに目を丸くしていた。
「ふぁーすとを…誰よりも……知りたい」
「ミクリオ…」
どうしよう、拒否されるだろうか。言ったあとに後悔ばかりが募っていく中、黙ったままの彼女は俯いてしまった。かと思えば、
「うがっ?!」
思い切り抱きつかれた。
「ふぁーすとっ?」
「私、ヤキモチ妬き出し、寂しがりやだし、ミクリオが思ってる以上に面倒くさいけど良いの?」
「僕にはふぁーすとしかいないよ」
「そんな事言って、知らないよ?」
僕の体から離れて今まで出見た事の無いふぁーすとの笑顔がそこにあって、笑みをこぼし僕からも抱きしめた。
「うふふ、面白いものが見れたわ」
「これは純愛…青春ですわっ…」
「うわあ、なんか周りがキラキラ見えるし。あたしにはまださぱらん」
「ですってよ、スレイ」
「え、俺?」
20150228
リクエストありがとうございました!甘くなっているでしょうか?
頭ポンポンはミクリオ君にだったらされて嬉しいかなと思いまして、書いてみました。←
これからも遊びに来てくださいね^^
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