歌音様へ 二万打企画
ユーリが意味解らん、と言うような顔をひきつらせながら立ち止まった。
「今お前、何て言ったんだ?」
「愛が足りない」
「はあ?」
また同じ会話を繰り返してしまった私達。私は至って真剣なんだけれど、頭を困ったように掻いている彼は面倒かのよう。
「寧ろ愛が感じられない」
「お前、そんなこと言うような奴じゃなかったろ」
「言わずとも解り合えると思ったら大間違いだよ」
私との恋情・愛情とフレンとの友情を同じにしてもらっては困る。
それだと私達はただのオトモダチだ。…夜以外は。
「あー、なんだ…どうして欲しいんだよ」
「まず確認」
「ん?」
「私の事愛してるんだよね?」
いきなり恥ずかしい事言うなと、口元を拳で隠しながら顔を背けたユーリ。耳が真っ赤。満更でもないみたい。
「どーなの?」
「そうじゃなきゃ付き合ってねーよ」
「……ま、そうよね。じゃあ愛してよ」
「またそんな、」
勘弁してくれとでも言うように頭を掻いてる様はいかにも面倒臭そう。
「ねぇ」
「…夜めちゃくちゃに愛してんだろ。最近じゃ毎晩、」
「うん、ごめん、もうやめて」
こっちが聞いていられなくなってしまった。
意地の悪いユーリは、そりゃ夜は更に意地悪いけれど、…ってそうじゃなくて。
それが愛情表現なら私は相当愛されている。浮気されてるとも思わない。前は旅していたし、今では毎晩求められるし心配はしていない。
でもそれ以外は昔から変わらない。気が合って互いが理解者で。
それに夜が加わっただけだ。
けど、恋心まで把握できない。だからこそ私は問いかけてる。
「ユーリ、もっとベタベタしてイイよ」
「具体的に?」
「イチャイチャ」
「いや、そうじゃなくてな」
「デートしたり、手を繋いだり、出掛けるときいつも愛の言葉を囁きながらキスしたり、ぎゅーってハグしたり」
「・・・・・・」
何よその目。
それくらい愛されたいんだもの、仕方無いじゃない。
「バカップルか」
「逆に言えば倦怠期よ。私達」
「倦怠期って程のヤバさじゃねーだ、」
「どうしてくれんの、倦怠期」
「お前な、人の話を遮るな」
私の前に椅子を持ってきて大層疲れたみたいに座り込んだユーリ。
ジトッと彼を見続けた。
「ユーリ」
「ん?」
「ユーリ」
「あ?」
「ユーッウリっ」
「だから何なんだよ」
「違う」
「はあ?」
立ち上がった時にガタッと椅子がずれる音がたった。
「答え方が違う!」
「だ・・だからなんだよっ」
上から、少し焦る顔を見せて座ってるユーリを睨む。
「そこは、ふぁーすと、でしょっ」
「何言って」
「イチャイチャしたくて名前呼んだのに。なのに何?今日一度も私の名前呼んでないじゃないのっ」
「そうだっけか?」
「もういいわ。私ももう名前なんか呼ばないから」
身勝手かしら…。まあそうだよね。
今頃彼は大層呆れ果ててるでしょう。腕を組んで背を向けてるから伺えないけど。
「あだなor愛称」
「ふん」
「おい、あだなor愛称」
「ふーんっ」
「あだなor愛称、おいふぁーすとっ」
「へっ?」
いきなり愛称じゃなくて名前をフルで言われた。
ふぁーすとなんてここ数年彼の口から聞いてなかった気がして思わず名前を呼びながら振り向けば、彼はしてやったりな顔で見てくる。
「早速言ってくれたなふぁーすとさん」
「…、なんか照れる」
「おーおー、初々しいな」
正面からぎゅっと抱き締められて胸の中に閉じ込められた。
私は抵抗の色もなくされるがままで彼の体ごと左右に揺れる。不意に耳元で聞こえた「愛してんぞ」に、私も愛してると呟いた。
「倦怠期脱出だな」
「さあ?・・どうかしら」
「んじゃ、手繋いで町をぶらぶらすっか」
相思相愛な二人。
「ユーリ、クレープ一口ちょうだい」
「んー」
「私のソフトクリーム一口あげるから」
「のった」
「はい、あーん」
「…ここでか?みんな見てるぞ?」
「あーん」
「…あーー・・・・ん、」
20130330
めちゃくちゃ遅くなってしまったっ!ごめんなさいっ。
ユーリとのデートってどんな感じかなと思いながら最後まとめちゃいました。
リクエストありがとうございましたっ!!
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