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きぃる様へ 七夕企画










たまに街で見かける貴方が見たくて、私はいつも・・いつも・・・・・いつも・・、待ち伏せをしています。


本当にたまにしか見かけないから(結構見かけるけど見てるだけ)常にこのラブレターという恋文を、・・あれ、同じだけど、兎に角それを持って自称保安官のウィルさんの家の付近をうろうろしてる。





「今日は来ないかな・・」




近くの木に寄りかかって彼が来るのを待ってみる。ま、ここが最近私の定位置になりつつあるんだけど。


何人ここを通ったんだろ。日も暮れてきたな、・・・。

はあ、今日は見込み無いかも。また道を歩いてくる人がいる。そう言えば彼もあんな髪型だな・・、服装もあんな感じ・・・ん?ん?!





「彼だっ!!!」




嬉しさのあまり大声をあげてしまって彼の髪がゆっくり揺れてこっちを向いてきた。

さらには、目があってしまった。





「・・・貴女は、」

「あのこれっ・・て、あれ?」




ない・・手紙が、ないっ?
あれっ?確かにここに入れたのにっ。

必死に探すも見つからない、とすると、落とした?えっどこにっ。

内心泣きながらも顔をあげた。彼が目の前にいる。こんなチャンス滅多にないのに手紙を探す暇なんて・・。

こうなったら直接言うしかない。腹をくくろうじゃないか。





「あ、あの」

「?」

「私貴方が・・」




さあ言っちゃえ私っ。





「す、すす」

「す?」

「・・・っ、スプレッドっ」




その瞬間私の恋は終わった。目の前にずぶ濡れの名も知らない彼が冷めた目で私を見てるんだもの。





「・・・・」

「あ、あは、は・・。ごめんなさーいっ!」




一目散に逃げて町外れにある家に帰った。

ベッドに思いきり飛び込んだ私は弾むベッドを足をバタバタさせて余計に弾ませた。





「私のバカバカっ、何であそこでスプレッドなのよっ」




その前に私がブレス系を使うのが間違いよ。昔の私はどうかしてるっ。

枕に顔をうずめて、あーとかうーとか呻いても後の祭り。取り返しのつかない事をしてしまったのには変わりないんだから。

どの道救いようがないよ。





「スプレッドだけに私の努力も水の泡ってか」




どうしよ、笑えない。

落ちた気持ちをなんとか上げようと、ある場所に向かった。







「ふぁーすと?どうしたんだ?」

「こんばんはセネル君」




セネル君の家です。

中へ案内されて適当に座った。





「今日もパンか?」

「うん。セネル君の美味しいから」

「何を作れば良いんだ?」

「作れるだけ作って。材料もちゃんと買ってきたからっ」




大量の材料をセネル君に渡したら苦笑いされた。





「何かあったのか?」

「何でもいいでしょ」

「解ったよ。少し待ってろ」




暫くしてどんどん出てくるパンを片っ端から食べていく私。こうなりゃ自棄食いよ。





「まだ食うのか?」

「実る兆しがない時は食べるに限るの」

「悪い、いまいち伝わらない」







いくつ食べたか解らないけど完食してセネル君を見ると疲れきった顔をしてた。






「ごめんねセネル君」

「全くだ。もう夜中だぞ」

「うん。でもありがと。美味しかったよ」




おやすみと一言声をかけて外に出た瞬間。






「痛っ、」

「・・・・っ。貴女はさっきの」

「・・え?」




誰かと勢いよくぶつかって尻餅をついた私は声の主を見上げた。





「あ、あ、あ・・」

「?、この家から出てきたって事はセネルさんと知り合いですか?」

「えっと、はい」




さっきの事に触れてこない彼に少し安心して返事をした。





「通りかかったらこんな時間に明かりが点いてたので寄ってみたんですけど」

「セネル君、は・・たぶん床で寝ちゃってます」

「セネルさんらしいです」

「えーと、・・それでは私は帰りますね。さよならー」




心臓がばくばくしてまともに接することが難しい。さっきの事もあって早くこの場から離れたいと歩き出そうとした。





「待ってください」

「な、なななんでしょう?」














そしてそのあと私は、無事に帰路を歩く。





「家が街じゃないのにこんな夜中まで何してたんです?」





なぜか彼と。

何でこうなっちゃうの?夜道は危ないからって送ってくれる辺り紳士なんだけど、今の私には毒だ。結構なダメージだ。心臓がもたないよ。







「あの、貴方は帰らないの?」

「ぼくは貴女を無事に帰してから帰りますから」

「でも、悪いよなんか」

「・・静かに」




突然彼の目が鋭くなったのが暗い中でも確認できた私は言われた通り口を閉じる。





「魔物がいますね」

「・・、戦う?」

「いえ、面倒です。それにこんなに暗いと何かとやりづらいですから」

「そっか」

「という事で、」




いきなり私の手を握ってきたから私は緊張してカチカチになる。嬉しいけど、どうしようっ・・・。






「走りますよ」

「へ?・・わっ」




手を引いてスゴいスピードで走る。途中私の足が縺れそうになったけどなんとか耐えて走りきった。





「撒きましたね」

「は、い・・」




走りすぎてまともに声がでない。そんな私を見るなり彼は笑い声を小さく漏らした。





「無理させちゃいました?」

「ううん・・平気」

「そうですか」




家はもう見えていてここからなら一人でも大丈夫だろう。

彼から手を離す。というか離したいよっ。





「手を離さないと私帰れない、です」

「そうですね。ふぁーすとさん」
「ありがと、何だかわる・・、あれ?私の名前・・」





教えてないよね?
なのに何で?もしかして幻聴?

色々考えを巡らせてたら、彼は何かを私に見せてきた。





「これ貴女が書いたんですよね?」

「!」




それを目にした瞬間私は一瞬にして体が燃えるように熱くなって彼から目を離せなくなった。





「スプレッドしていったでしょう?その時に足元に落ちてたんで」

「そんな、」

「ふぁーすとさん、相当あがってたのか落ちた事にも気づいてなかったみたいですね」





あの時確かに確かめたのに無かった。・・・でも地面まで見てなかったかも。





「これ、僕宛なんでしょう?濡れたのに中の文字が滲むこともなく読めるなんて随分と頑丈な手紙ですね」

「ごめんなさいっ、迷惑ですよね・・そんな、」





俯くと視界に彼の手が入ってきた。思わず顔をあげると笑っている彼。





「ジェイです」

「へ?」

「まずは僕の名前から覚える事をしてください」





彼、ジェイくんの出した手は握手の手だと理解してそっと手を握った。






「返事は先延ばしで良いですよね、ふぁーすとさん」

「うん。宜しくね」





こいぶみ

私は名も知らない貴方に
恋をしました。
    ふぁーすとより








20120710

リクありがとうございましたっ!書いていて楽しかったのですが、ドキドキ出来たのかちょっと疑問です(>_<)ドキドキ展開うまく書けずすみません。私もドキッとくる話を書けるよう頑張ります!




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