同居人とワタシ 05
教室。
私は物凄くギリギリの時間に登校した。それというのも昨日の事もあってセネルと顔を合わせたくないからで。
学年も違うから教室に入ればこっちのもんだ。
「ふぁーすと〜おはよ」
「おはよう」
クラスの友人が前の席に座って後ろ向きに私と向き合う。
「にしても随分と遅い登校だったわね。寝坊でもした?」
「まあ・・そんなとこ」
・・・・としか言えまい。
特定の人物と鉢合わせしたくないと言えば必ずその理由を訊いてくるだろうし。
理由も理由だし・・、ね。
「ふーん。ま、朝から全校集会だし遅れてきても問題なかったかもね」
「今・・なんて、」
「だから遅れてきても、」
「そこじゃないっ」
全校集会って言った?
それじゃセネルも勿論体育館に来るわけで・・、いや、まて。生徒沢山だし、終わったあと見つかる前に体育館から出れば・・・・。
「ちょっとふぁーすと?・・大丈夫?」
「ダイジョウブダヨ。」
「・・ごめんそう見えないや」
学年ごとに座り、校長やら生徒会やらの話を延々と聞いている。
聞いては、いるんだけど・・
「・・・・」
「・・・・」
私の隣にはセネルが座ってる。
簡単に説明をしよう。私の隣の列はなんとまあ第二学年なのでした。
セネルのクラスは男子しかいないから、必然的に私の隣は二年生の男子になるわけだけど・・、何この確率。
「───即ち、」
即ちじゃないよ、生徒会長・・。早く終わらせて。
私は初めて自分がA組だってことを恨んだ。
生徒会が並んでいるのを見るとジェイくんも並んでて救いを求めたくなる。というか元の発端は彼じゃないか。
私に気づいたのかジェイ君は私にニコッと微笑む。・・そもそも私に、なのかな?
だとしたらすごいよ。結構離れてるしこんな大勢の中から私を見つけ、
「おい、デレデレすんな」
「!」
え、デレデレ?
その前に、え、セネル?
チラッとセネルを見ると不機嫌丸出し。
「せ、セネル?」
「こういう場でもイチャイチャするな。気分悪い」
「い、イチャイチャ?」
いったい何の話をなさっているんだセネルは。
私は黙って下を向いた。
向いてはため息をつく。つきたくもなるよ。変な言いがかりされちゃうし、意味わかんないし。
「以上、全校集会を終わります」
終わった!
今の内に急いで、
「先輩?ちょーっといいですか?」
「は、・・ハイ」
捕まってしまった。
「で、一緒に暮らしてるってどういうことだよ」
「そのまんまの意味だよ」
「何のために、」
「何のため・・・・って、」
私も詳しい話は知らないし、いつの間にかジェイ君が同居することになっていた。
安易に下手なことも言えないよ。
「付き合ってる、とか・・か?」
「へ?そんなんじゃ、」
「じゃあ何だよっ!」
セネルは何でこんなに怒ってるの?
私には理解できない。目を瞑って見て見ぬふりをしてくれないかな・・。
「何とか言え」
「・・・、・・」
「ちょっと強引じゃないですか?」
何も言えないでいると、横から現れたジェイ君は私とセネルの間に割って入ってきた。
「ぼくとふぁーすとさんの事ですよ?何故そんなに気になるんです」
「黙れっ、俺はふぁーすと先輩に訊いてるん、」
「まるで恋人かのような言い種ですね」
「っ!」
セネルの顔がどんどん真っ赤になってる。疑問に思っているとセネルは悔しそうに口を開いた。
「俺はそんなつもりじゃない!」
「では何故そんなにムキになってふぁーすとさんを問い質すんですか。別に該当しているぼくでも良いでしょう」
「・・・・、」
ジェイ君の目も鋭いくて何だか怖い。
黙って見ているとセネルが私を見てきて少し体が跳ねる。
「悪い、ふぁーすと先輩。二人の事、だもんな」
「セネル、?」
「セネルさん、ぼくとふぁーすとさんはただの先輩後輩の関係です。たんに事情があってぼくが彼女の家に上がり込んでるんですよ」
「・・そうか」
「それに彼女の母にも許しを得てますから問題はない筈です」
そこまで言うとセネルが黙ったまま立ち去っていった。
凄くホッとしたような、でも複雑そうな顔してたけどどうしたんだろう。
「ジェイ君」
「はい?」
「ありがと。ジェイ君が来てくれなかったらどうなってたか」
「・・・・、殴り合いにでもなってたんじゃないですか?」
「は?!」
私にそんな根性はないと伝えれば、傘を持てば根性でるでしょうとかあの時の事を引っ張り出してきた。
「ふぁーすとさん」
「な、何よ・・」
「・・、。もう二限目始まりますよ」
「あ!ほんとだ!ジェイ君も早く戻りなよ?」
「生徒会で野暮用だと言えば許されるので平気です」
気持ちの良いほどハッキリと言ってくれたこの男を少し睨む。
「職権乱用」
「職じゃないですし」
「もうっ!それじゃありがとねジェイ君」
20120828
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