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同居人とワタシ 04













「いらっしゃいませー」




今日の学校はほんとどっと疲れた。朝からセネルとクロエが痴話喧嘩(の様なもの)を始め、挙げ句巻き添えをくらいクロエには先輩らしくしろとしかられた。

更にはあの同居人ジェイ君が同校の生徒だったなんて。
本当に高校生だったんだ・・、って観点違うか。

昼には売店でノーマ達が白い目で私を見てきて気落ちする。それもこれもあのジェイ君が余計な事を言うからっ。

放課後には誤解を解いてくれたみたいだけど、こんなのはもうごめんだ。


ほんっと疲れた、いつも以上に。

なのに私は






「ご注文をお伺いしても宜しいでしょうか」





バイトが入っていた。

もう疲れすぎて笑顔ひきつってないかな?





「ミルクティのトールとハムエッグとクロワッサンで」

「・・・」




いや、ひきつるのは疲れとかそんなんじゃない。この状況はひきつる。





「ジェ、・・ジェイ君?」




私服のジェイ君が座っていたら流石の私も笑顔なんてひきつる。





「何してるんです、注文しましたよ?」

「な、何でここにっ」

「夕飯がないのでここで済ませようかと思いまして」




そっか、家には私一人だったからバイトの日は帰ってから適当に食べてたんだった。

だから勿論ジェイ君の食事なんて用意してる筈もなくて、今の状況に至ると言うわけだ。


にしても、ニッコリと笑っちゃって。わざわざ私のバイト先まで食べに来るなんて当て付けか。しかもちょっと特殊だけど一応カフェだぞここ。どんだけお洒落な夕食だよ。


私の苦悩を他所に、ジェイ君は携帯をいじり出した。






「オーダー入ります、ミルクティトール、ハムエッグ、クロワッサン、オールワンです・・」

「はい、・・て先輩どうしたんだよ」




バイト仲間のセネルが元気のない声に心配してくれたのか顔を覗き込んできた。

因みにこのお店はセネルの家のお店だったりする。





「ちょっと厄介なのが来てて」




ちょいちょいとジェイ君の方に指を指したら、セネルも理解した様子。





「あいつ・・朝先輩を虐めた、」

「虐めってほどでもないんだけどさ」




あくまでセネルは私の味方らしく、ジェイ君を良く思っていないらしい。





「ふぁーすと先輩、あいつと何かあったのか?」

「んー。でも大したことないよ」

「そもそもどういう関係なんだよ」




二人で一緒に暮らす関係です、なんて言えるわけがない。それこそ問題だよ。奇跡的にジェイ君も言ってないみたいだし。ま、面倒になるから普通言わないか。





「あ、いらっしゃいませ」




お客さんが入ってきてジェイ君の真後ろのテーブルに着いた。メニュー欄を少し眺めてすぐに決まったようなので注文を聞きに言った。






「お待たせしました」





隣からセネルの声が聞こえてくる。ジェイ君が注文したものを持ってきたんだろう。私はオーダーを取るのに集中し・・





「お前、ふぁーすと先輩とどういう関係だ」

「レムトゥ・・っ?!」





セネルの質問に、注文を繰り返していた私はレモンティーを見事なまでに噛んでしまった。

って、セネル何聞いてるのよ。
でもジェイ君もバカじゃないし、言わな、





「どういうって、一緒に暮らしてます」

「え?」

「・・・・・」





終わった・・。というか隣から凄い鋭い視線が来てるようなそうでもないような・・・・。





「しょ、少々お待ちください」




お客のオーダーをさっさと聞き終えてセネルを見ないようにそそくさと通り抜ける。

それから必死にセネルから逃げるが、そんなに長くは持たなかった。






「おい先輩」

「ななな、何?」

「どういう事だよ」

「何、が?」

「一緒に暮らしてるって・・・何が大したことないだよ。大したことあるだろ」




くそう、何であそこで言っちゃうかな。ジェイ君ってば何考えて・・・。






「あ、ふぁーすとさん、お久しぶりです」

「シャーリィ、久しぶりっ」





シャーリィ本当にナイスタイミングだよ。暫くお店の方に顔を出してなかったシャーリィがこのタイミングできてくれた事を奇跡に感じながら話をそらせた。






「お兄ちゃん、ふぁーすとさんもう上がりだよ?」

「あ、本当だっ。じゃあセネルお疲れ様!シャーリィもありがとう」

「?、お疲れ様です」

「あっ!・・・くそ」






着替えを済ませて裏口から出るとジェイ君がすぐそこに立っていた。





「バイトお疲れ様でした」

「お疲れ、ジェイ君。何でここに居るの何でセネルに言っちゃうのっ?!」

「質問は一つずつしてくれませんか?」




焦りから来る怒りを露にしてる私に対して、ジェイ君は涼しい顔して笑ってる。





「あのねっ、」

「ふぁーすとさん、何も食べてないでしょう?」

「は?え、・・うん」




そりゃバイト上がりな訳だし、まだだけど。





「やっぱり。ほらこれ」




差し出されたのはずしりと何かが入っている有名な某お弁当屋の袋。状況が読めないまま彼を見るとやはりにっこりと笑っていた。






「買っておきました。帰って食べましょう」

「あり、がとう・・」





意外にも素直に出てきたありがとうに思わず私自身苦笑した。

一緒に帰りながらこんなに気の利く子だったんだな、とか思ってみたりする。

帰宅してお弁当を二人で食べる。ジェイ君はさっき食べた筈なのに、まだ食べたかったからと言っていた。





「そういえばセネルに何で言っちゃうのよ」

「訊いてきたからです」

「普通濁したりするでしょ」

「どうせ後々ばれるかもしれないんだから初めの内に言っといた方が面倒事は起きないでしょう」





そんな食事中の会話に気が重くなってしまった。あのセネルだ。明日から波乱な気がする・・色々と。





「・・起きる気がしてなりません」

「平気ですよ」

「大丈夫じゃなくて平気なのね」



私の解釈からすれば、彼の平気は、面倒事が起きたところで別に気にしない、と意味してるような。

厄介なのがセネルだ。変なところで突っ掛かってくるから(私の一人暮らし状態を知ってるから尚且つ)面倒だよ。





「ふぁーすとさんお風呂お先にどうぞ」

「・・・そうするよ」








20120715




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