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同居人とワタシ 03










「ふぁ、・・」






朝、目覚ましに起こされて気だるさが残る体を無理に立ち上がった。朝に弱いところはいつになっても改善の兆しは見えないな。


制服に着替えて洗面台へ行っていつも通り顔を洗ったあと、歯を磨こうと歯ブラシに手を伸ばそうとしては思わず手を止める。







「あ・・」








私のとは別に他の歯ブラシが置いてあった。


そうか、今はジェイ君もいるんだった。ここに来るまで会わなかったけどまだ寝てるのかな?


無意識に私の部屋がある二階を見上げた。

歯を磨いたら見に行ってみよう。











「ジェイくーん、おはよう」







二階の私の部屋の戸を二回くらいノックして反応を待つ。






「ジェイ君・・? 寝てるのかな?」






ジェイ君も学生ならば学校がある筈だし、起こさないと遅刻しちゃうよね。







「入るよー、・・あれ?」








中を覗くとジェイ君の荷物が置いてはあるけど、肝心なジェイ君の姿がない。


もしかしたら居間に居るかもしれない、と階段を降りて居間に入るけど居ない。

代わりにラップのしてあるお皿とメモが目に留まって読んでみる。




学校へ行ってきます






たった一言だけど何だか嬉しくなってそのメモをそっと手帳にしまった。


学校に着いて靴を上履きに履き替えていたら後ろから声をかけられて一旦そちらを見る。







「先輩、おはよう」

「おはようセネル。朝から元気だね」

「そうでもないけどな」

「まあセネルは昔寝坊の常習犯だったしね」

「何言ってんだ。中学の時、部活のキャンプで二人して寝坊したじゃないか」

「そうだっけ?」






セネルとは中学からの仲で、…と言っても私が中学三年の時に転校してそれからだけどね。






「そう言えば妹さんは元気?」

「ああ。今年受験だからって張り切ってる」

「へー、高校はどこ受けるの?」

「それがここらしいんだけど、あいつ合格できるか解らないな」







他愛のない話をしながら廊下を歩いてたら黒髪の女子が私達の前に立ちはだかった。

正確に言うとセネルの前に。





「クーリッジっ!先輩には敬語を使えと言っただろうっ」

「げ、クロエ」






生徒会副会長のクロエは物凄い剣幕でセネルに詰め寄っては注意を促してる。当のセネルはまるで不貞腐れたように口を尖らせ視線を反らしてた。





「クーリッジっ!!聞いているのか!?」

「聞いてるさ。けど今更敬語をふぁーすと先輩に使えって言われてもな」

「それだからお前はダメなんだっ」

「ダメってことはないだろっ」





廊下のど真ん中で口論を始めた二人を見ていつも思う。





「・・・痴話喧嘩」

「「 違うっ! 」」





ボソッと言えば息の合った返事で一喝してきた。






「クロエだって今敬語使ってなかっただろ」

「い、今のは・・その」

「もう敬語じゃなくていいよ、クロエも」

「ですけど、」

「クーってば、かったいなー。あだなだって別に良いって言ってんじゃん」






突然の乱入者ノーマがいつものように軽い感じに言葉を飛ばせば、やっぱりクロエは黙っちゃいなかった。正に火に油。





「ノーマ!少なくとも私も先輩だぞっ!敬うって事を知らないのかっ」

「だっからー堅いんだってー」

「もう二人ともいい加減にしろよ」

「クーリッジが言える立場かっ」

「もういいよクロエ。私気にしないし」

「先輩は先輩という自覚が足りませんっ」






そりゃそうかもだけどさ・・・。誰か止めてくんないかな。私は切に目の前で繰り広げられてる言い合いがおさまってくれと願うだけ。

巻き込まれた上にこれじゃ教室にも行けない。


・・・こっそり別ルートで行っちゃおうかな。

踵を返して、そろ〜と歩き出してみた。





「あだなってばずるーいっ!一人だけ逃げようとしてるーっ」

「だって、さ」

「ふぁーすと先輩、逃げるなら俺も誘えよ」

「やだよ問題児」






結局逃がすまいと言わんばかりにノーマに捕まりクロエのお説教を聞く羽目になった。

朝からこんなだと今日はきっと厄日だな。






「何してるんですか。通行の邪魔ですよ」

「ジェイっ」

「・・・へ? ジェ、イ?」





クロエが口にした名前と聞き覚えのある声に、まさかと振り向いたら





「ふぁーすとさん、おはようございます」







ジェイ君・・でした。


混乱気味の私に小さく笑った彼は、何とも悪戯な表情だ。

いやいやいや待って。何でジェイ君がここに、私の目の前に居るの?







「あだな、知り合いだったの?」

「何その私は知ってました感は」

「知ってて当然っしょ。あたしら同じクラスだし」






目が点、って今の私にお似合いな言葉だよね。改めてジェイ君を見れば明らかに私をバカにしたような顔で見ていた。






「一応生徒会で週に三回は朝、門で見かけてる筈なんですけどね。貴女の視界が余程狭いことが解りましたよ」

「・・・」







驚きすぎて何も言えずにいると不思議そうにクロエがノーマと同じ質問をジェイにしていた。





「ふぁーすと先輩とはちゃんとした面識があったんだな。良く知っているのか?」

「そうですね。将来立派な泥棒になれると解るくらいに」

「泥棒って・・。ふぁーすと先輩、お前」

「セネル?そんな目で見ないでくれるかな?悲しくなるから」






とんでもない爆弾を投下してくれたジェイ君を睨めば、ニヤリと微笑まれ嫌な汗が出てくる。







「泥棒はいけないことだ」

「本当にやめて。違うから誤解だから」

「先輩・・」

「クロエもそんな顔しないで。てか人の話聞いてた?」






何なのこの子達。あのノーマさえもがあり得ないとでも言うように腐ったものを見る目で睨んでくるし。




「「「泥棒はいけないことだ」」」





「ジェイくーん!?どうしてくれんの!?」

「はは、遊び甲斐がありますね」

「私で遊ぶなっ」









20120530
投稿日//20120701






あきゅろす。
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