まい・でぃあー 24
「うがー!!ここどこ!?」
あたしらは、港を出て懐かしいねーなんてお互いの過去についてお喋りしながら歩いてたら見事なまでに迷った。何ここ。森の中。
「道を外れて行った方がどこかしらの町に早く着くって言ったのはノーマさんでしたね」
「ちょっと、あたしだけかいっ」
手紙に書かれてる住所をどこかの町で聞こうと思って、港からの道を歩いて歩いて…。でも歩いても街なんか見えてこなかったし、そんな状況に嫌気がさしたのか知んないけど、こっちの方向なんじゃないかってセネセネが指差したからそっち行ってみる?って言っただけだよ?疑問系だし。
「で、どっちに行けばいいんだ?ノーマ」
「セネセネが方向知ってたんじゃないの?」
「忘れた」
こんなにもセネセネをぶん殴ろうと思ったのはコレがはじめてかも知んない。
それに比べてクーはあごに手を当てて考え込んでるあたり、何か策があるのかも。
「クー、こっからどうしようか?」
「そうだな、…。野宿する前には森を抜けたいところだが」
「皆さん静かに。物音がします」
ジェージェーの言葉に一斉に口を閉ざしたあたし達はそっと武器を構えた。クーが合図を出したときその物音へと飛び掛ったんだけど、
「きゃあ!」
バスケットを抱えた家政婦みたいな格好のおばさんがびっくりしてしりもちを付いてたから皆慌てて動きを止めた。そしたらそのおばさんが困ったようにスカートを叩きながら立ち上がると口煩そうに話し出す。
「何ですいきなり!そのような物騒なものを持ってまあ!危ないったらありゃしませんよっ。それにあなた達まだ子どもじゃありませんこと?近頃の若者ときたらもうっ」
ビンゴだ。こんな森の中でどっかの教頭みたいな人に捕まっちゃった。こういう人のお説教って長いんだよ、本当に。
「すみませんでした。こんな森でご婦人だとは思わなかったもので」
「あら、素直な子も居るもんですね」
「本当にすみません、道に迷って尚更魔物に注意をと」
上手く謝ってくれるジェージェーを先頭に皆で謝ったら、おばさんはさっきよりかは、怒ってなさそう。
「ところで、道に迷われたの?」
「はい」
「街ならここから北へ二十分ほど歩けばありますわよ」
「なるほど、ありがとうございます」
おばさんは親切に教えてくれて森の奥に消えてった。
言われたとおりに北に進むと小さな街が視界に入ってきてあたしらは一安心、なんだけど、ジェージェーが難しい顔をしててどうしたのかと聞いてみた。
「早くふぁーすとの住所の場所を聞かないと、」
「おいおい、もう日が暮れる。今日は宿に泊まろう」
「そうだぞ、ジェイ。夜の森は非常に魔物が出やすい。愛しい奴に会いたい気持ちは私にも解るけどここは我慢のしどころだ」
正論を言われて黙りこけちゃったよ。たぶん、たぶんだけど、ジェージェーはこれほど朝日を待ち遠しく思うことは無いんじゃないかな。
「っよーし!今日は早く寝て朝日とともに探しにいこうよ!」
「今日は街で場所を聞きまわらないとな」
「そうだな」
今効率良く出来る事を全力でやらないと、あだなにも会えなくなりそうだし。
街に着いた途端、ジェージェーが宿屋とは別の方向に向かってく。
「おいジェイ、宿屋はこっち、」
「セネルさん達は宿をとっておいてください。ぼくはその間に街の人達に尋ねてくるんで」
そう穏やかに言って、街の中へと姿を眩ました。セネセネは呆れたようにため息をついたけど、ジェージェーを信じてるからか無理に止めもしなかった。
「ふかふかー!ふっかふかベッドー!」
「ノーマ、あまりはしゃぐな」
「だってまじで野宿すんのかと思ったもん」
あたしらは食べた後に着替えて女子用に取ってた部屋のベッドで横になる。クーおっきな枕を抱えて座り込んでた。
「恋とは複雑だろうな」
「なにさ、いきなり」
「想っていても何かが気がかりで上手くいかない、何てこともあるだろう」
ジェージェーとあだなの事かな。
「そんなの解んないじゃん、まだ」
「ああ、だな」
「それより、セネセネとはどうなんですか〜?奥さーん」
「ばっ、ノーマ!」
「いで!」
そんなに凄い勢いで枕飛ばさなくても。よーし、とあたしも投げようとしたら、ノック音が部屋に響いた。
「クロエさん、ノーマさん。起きてますか?」
「ジェイか、漸く帰ってきたんだな」
クーが戸を開けて、ジェージェーを中に入れてあげるとさっきよりもまっすぐな目で、話し始める。
「この住所が解りました。どうやらさっき僕達が迷ってた森のようです」
「森って、どっかの街じゃなくてか?」
「はい、前にふぁーすとにも街外れの森に住んでると聞いた事がありました。なので間違い無いと思います」
そして何かを出してきて、見てみると印の付いた地図。どうやらここがあたしらの目的地みたい。
「今日はゆっくり休んでください。明日は早いですよ」
「解ったよ。ノーマ、寝るぞ」
「えー、ガールズトークは?セネセ、」
「寝・る・ぞ」
有無を言わせないんですね、そうですね?はぁ〜あ、もうちょっと話したかったのに。まあそれはあだなが一緒の時でもいいよね。
「おやすみ・・・」
って、あれ?
「ノーマ!起きろ!」
「うあ?」
目擦りながらむくりと起き上がったら、女子部屋にセネセネが。
「寝込み襲うとかいい度胸じゃん」
「寝ぼけたこと言うな。もうみんな準備できてるぞ」
「へあ?」
窓の外を覗いてみたら、あらま、もう朝なのね。
「にしても、セネセネ珍しく起きてるね」
「・・・、俺だってあんな凄い剣幕の奴が同室じゃなかったら」
「ん?」
何でもないって濁らせて部屋を出てった。
なんなのさーもう。とにかく身形を整えてから宿屋からでた。・・・ら、
「ノーマさん、遅すぎです」
「ジェ、ジェージェー?」
「これでまた夜になったらどうしてくれるんですか」
「もうめちゃくちゃだよ、言ってること」
そうしてあたし等は森の中に入って一時間ほど歩いて行くと、それらしい屋敷が見えてきた。
けど外見はボロボロ。
「ね、ねえ。こんな所にあだなが住んでるの?」
「ここで間違いはないようですが、…人が住んでるような気配はないですね」
「とりあえず入ってみよう」
敷地内に入って玄関まで少し距離があるけど、もう何これ。お化け屋敷か何か?
漸く大きな扉まで辿り着いてギギギって軋ませながら開けると、中は、カーテンがしてあるのか、外からの光を遮ってて薄暗い。
なんか如何にもって感じでヤバそ。
「誰です、勝手に屋敷に入って来るなんて」
端の階段から降りてきたのは…。
「貴女は、昨日の」
「あらあら、あなた方は。これはまた何用ですの?」
昨日のおばさんだ。でもなんでこの屋敷に。
「人を探していまして。ふぁーすとという方を探しています」
「…、どうかお帰りください」
苦虫を噛んだようにそう言ってきたおばさんに納得できないジェージェーとあたしらは一瞬体を強張らせた。
「その様子だと知っているようですね」
「お答えできません。例え知っていたとしてもお教えできません」
「なんでさ!」
「あなた達こそ勝手に人様の屋敷に入ってきて何様なんですっ?無礼にもほどがあります、直ちに帰ってくだ、」
その時だった。
「シャーロット?」
ドレスを纏ったあだなだ。あだなが二階の手すりに手を乗せてあたしらを見下ろしてた。
一瞬目を見開いたかと思うと、すぐに無表情に戻って厳しい表情に戻る。
まるで、別人だ。
「お嬢様、それが」
「何事かと思えば、お客人ですか」
「あだな?」
「せっかくの客人ですわ。丁重にお迎えして下さいな」
そう言い残して、踵を返してどっかの部屋に入って行った。
「…お嬢様がああ仰って下さってるんです。有難く思ってくださいね」
いちいち腹立つな。それにしてもあだな…、どうしちゃったんだろ。
大きなテーブルのある部屋に通されて、シャーロットって人が紅茶を注いでくれる中、ジェージェーは浮かない顔だ。
「どうぞゆっくりしていってくださいな。あたくしは少し買い物へ行ってまいりますので」
シャーロットさんはお辞儀をして、どこかに行っちゃった。
「ぼく、ちょっと行ってきます」
立ち上がったジェージェーの後を追おうと椅子から腰を上げた時、クーに腕を掴まれて止められた。
「あ、あたしも…」
「私たちはこの紅茶を飲んでからにしよう」
正直あんなあだなに同声をかけて良いのかも解らなくて静かに座りなおした。
ジェージェーなら、どうにかできるのかな。
20141118
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