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まい・でぃあー 23




「おはようジェイ。今日の午後がが到着予定だな」

「クロエさん。昨晩は随分とゆっくり眠れたようですね」

「え」

「ほーんとに、幸せそうな寝顔で。海の上なのに」



ジェイの言葉に朝食の準備をしながらドキリと来た。そりゃ、クーリッジの腕の中でだな、…その。それにどちらかといえば緊張しすぎてクーリッジより後に眠ってしまった。とはいえ、…いい眠りだったのは事実だ。だってだな、クーリッジがクーリッジでクーリッジを…。ああ、駄目だ。思考が可笑しい。




「どったのー?」

「寝るのも早くて起きるのも遅かったノーマさんは見れなかったでしょうね。残念でした」



ボボボと顔を赤くして全身を硬直させた私をいい事に、ジェイは何も知らないノーマに仄めかす。くそ、面白がってるよ絶対に。



「本当、人の気も知らずに、まあ、大胆な」

「えー?何があったの?」




あれ、違うぞこれ。面白がってる、という表現は少し…いや、だいぶ違うようだ。私を見るその顔はもう僻んでるようにしか見えない。ふぁーすとの事もあるのだから尚更、癪だったんだと思う、たぶん。



「げげー、朝からプリンパン?なんか萎える」

「文句を言うな、クーリッジが丹精込めて作って来たんだぞ」

「けどさー」

「ノーマさん、それが嫌ならホタテグミが大量にありますからそれでよければ」

「あー、プリンパンイタダキマース」




それは嫌だったのか、ノーマはわざとらしいほどの満面の笑みで食べ始めた。




「ところでクロエさん」

「なんだ?」

「さっさと旦那さんを起こしにいかれてはどうですか」





嫌がらせか、嫌がらせなのかジェイ。それは勿論不快な思いをさせたかもしれないが、根に持ちすぎだろう。




「ちょ、ジェイ!」

「まだグースカ寝てますよ旦那さん」

「解ったからそう言うなっ」




これ以上言われてノーマにまで知れたら堪ったものではないので、大股で寝床に向かった。案の定、すやすやと眠っているクーリッジ。そして私は布団を引っぺがしてクーリッジに怒鳴りつけながら起こした、…という事も無く、屈んでクーリッジの顔をじっと見つめた。

…かっこいい。




「クロエさん」

「あ」







































「ふぁあ…もう着いたのか?」

「もう直ぐなので身支度を済ませてください」



結局ジェイが来たから私はクーリッジを起こす事が出来なかった。決してクーリッジに見とれてたなんて事はないぞ。




「ねーねー!大陸見えてきてんよ」

「本当か?」




懐かしい大陸に胸が締め付けられそうになる。過去は過去なのだが、…思い出さないわけが無い。


ふう、と息を吐きながら隣を向くと、ノーマはポーチに仕舞っていたふぁーすとからの手紙を取り出して難しい顔で見入っていた。急激に変わってしまったふぁーすとの態度は手紙からも伺える。恨んでいるからこそなのか。…けれどそれで返事を書こうと思うのだろうか。





「あだなはさ」

「?」

「あたしの友達なんだよね?」

「私に訊くな。それと、お前だけじゃない。私だってふぁーすとの事、大事な友達だって思ってる」




少しずつ近づいてくる大陸を眺めながら目を細めて言った。




「だよねー。…何がなんでも友達だっての」

「ああ」




相変わらずだ、ノーマは。ふっと笑って気を引き締めていこうと言えば、ノーマは、おうよっ、なんて張り切って返事をしてきた。




「もう直ぐだな」



クーリッジとジェイも



「ああ、…って、や、きゃあっ」




急に波が出てきたのか、大きく揺れた船に体勢を崩した私はクーリッジにしがみ付くように肩を掴んだら、クーリッジも一緒に体勢を崩して倒れてきた。



「いってて…、わり、クロ…エ?」

「う、う、う、」



なんなんだこれは。クーリッジが圧し掛かってきて胸を掴まれてる。
これが別の奴だったらお構い無しに急所を蹴り上げてぶん殴って海に突き落としてるところだ。

だが、上を見ればクーリッジの顔、見開いた目で左を見れば床を付いたクーリッジの腕、もう視界いっぱいにクーリッジ。



「ごご、ごめっ…」

「うわあぁぁあぁーっ」

「こんな少女マンガのような展開いりませんけど」




薄れる意識の中でジェイの言葉が聞こえた。

ああ、ご尤もです。




20140915







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