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同居人とワタシ 02












「そ・・粗茶ですが・・」

「ありがとう御座います」






お茶をゆっくりと口へと運ぶジェイ君を見つつ、テーブルを挟んで向かい合わせに座布団の上に座り込んだ。






「さっきはごめんね。まさかお母さんの知り合いだなんて知らなくて」

「別に構いませんよ?あなたのバカは天性なんでしょうし謝られてもね」

「・・・」




何でこんなに毒を吐くんだこの子は。

お母さんも酷いよ。知らせも無しにこんな事見ず知らずの子と今日から同居生活を送らなきゃいけないなんて不安しかない。






「ふぁーすとさん」

「・・なに?お茶菓子欲しいとか?」

「違います。ぼくはここで暮らす事になりました。なのでそんなに気を使わなくて良いです」

「努力する・・」






そうは言ってもなー。初対面だしやっぱり緊張するって言うか気を使うって言うか。

それに、お互い何にも知らないわけし。





「ジェイ君は・・さ、・・・・えーと」

「なんです?ハッキリして貰わないとこちらも困るんですけど」





自分から言いかけて躊躇ってしまった。訊いても良いのかな・・。

ここへ来た理由を。
足を踏み込んでも良いものか・・。




「ふぁーすとさん?」

「、えっとね?どうして私の名前知ってるのかなー、なんて・・」




タブーかもしれないから質問を変えて必死に絞り出した質問がこれ。
普通に考えたらお母さんが教えた以外考えられないけど。




「おかあさんさんが教えてくれたんです」

「そっか」




やっぱり。予想通りの返答が来て苦笑いを浮かべた。




「バイトをしているとも聞きました」

「そ、なんだ。(お母さんも会う前から教えすぎだよ)」






そんなお喋りな自分の母に思わず溜め息をついてジェイ君を見れば、つい見とれてしまった。

何て言うか、。





「女の私より綺麗だよね・・」

「は?」

「だって綺麗な顔立ちしてるし女の子にも見える」

「貴女・・、馬鹿にしてるんですか?」

「違うよ、誉めてんの。学校でモテモテでしょ?」

「知りませんよ、そんな事」

「学校と言えばジェイ君はどこの中学?この近くなの?」

「・・・」




私にスゴい睨みを効かせて見てくるジェイ君に私は悟った。

たぶん・・否、きっと


私は地雷を踏んでしまったんだと。





「ふぁーすとさん?どうやって死んでくれます?」

「あ、あの!私まだ死にたくないんですけどっ」





凄まじい殺気に怖じ気付いて座ったまま後ずさる。






「それに何でそんなに怒ってるのっ?」

「ぼくはっ・・、」

「・・・、・・?」




急に黙り込んだジェイ君にどうしたんだろうと顔へ視線を向ければ膨れっ面でそっぽを向いてた。




「ジェイ・・くん?」

「ぼくは・・・、・・・・です」

「へ?聞こえないよ」





蚊の羽音のようにボソボソと言っていて聞き取れなくて、私が訊き返したらキッと反れていた目が私を捉えた。




「ぼくは高校生ですっ!」

「えっ?ウソ!てっきり中学生だと、」

「貴女の目は節穴ですかっ?だいたいさっきから失礼な事ばかり言って、本っ当頭が弱いようですねっ」

「あ、のねぇ!私が悪いのは認めるわよっ。でもだからって何でそんな風に言われなきゃいけないわけ!?」

「貴女がいけないんでしょうっ?」

「そうだけどっ、そう見えるもんは見えるんだから仕方ないじゃない!いっぺん自分の姿見て出直してこいっ!」

「〜〜っ、言ってくれますね・・っ」




火花が散りそうなほどお互い睨み合って口を開けば口喧嘩が繰り広げられた。









「はぁはぁ・・・(言い合いってこんなに疲れるもんなの?)」

「・・・・・」





へとへとな私に比べてジェイ君は余裕のようで、また顔を背けてる。私も大人げなかったかな?


時間も気付けば七時を回ってて、本日何度目かの溜め息。

夕飯の支度をしないといけないや。




「ジェイ君・・、ごめん。言い過ぎた」

「・・、・・・・」




チラッと私を見たかと思ったらまた顔を背けてしまった。余程怒ってるらしい。





「ねえ・・本当にごめん」

「・・・・・」




困った。

私は昔からそうだ。誰かと喧嘩をすれば仲直りなんて出来た試しがない。




「私、急いで夕飯作るからジェイ君は適当に寛いでて」

「・・・・・」




こんなんでこれからやっていけるのかと心配になるけど、喧嘩をしてしまった以上致し方あるまい。

私は台所に立つ前にお風呂場へ行ってお湯を沸かす。

とにかく、せめて会話が出来るくらいにならないとこの先大変だよね。


台所に行って支度を始める。時間が時間だから簡単に出来るものを適当に作り始めた。


とんとんとん、と静寂の中に包丁の音が響く。





「・・ふぁーすとさん」




今度はジェイ君の声が後ろからして手を止めて振り返ると案の定ジェイ君が俯きながら立っていた。




「さっきはすみません・・その、ぼくも言い過ぎました」

「・・ジェイ君、・・・ありがと」

「・・何のお礼ですか?」

「仲直りしてくれて」

「べ、別にぼくは・・・・」




慌てて弁解しようとするジェイ君は何処と無く顔が赤くて小さく笑ってしまった。










そして夕飯を食べながらジェイ君は話を切り出した。






「ぼくはどこで寝れば良いですか?」

「あ、そっか」






ジェイ君の部屋はどうしようと悩むと、一部屋物置用の部屋があるのを思い出した。

物置と行っても殆ど何も置いてないけど、掃除はやってないから相当埃っぽいと思う。だから今すぐには使えないな。






「ジェイ君、今週は私の部屋を使って?」

「は? 貴女は?」

「私はお母さんの部屋使うから。今週末バイト休みだし、その時にジェイ君の部屋準備するよ」

「でも、」

「でもじゃなくてっ。はい決まり」

「・・貴女って意外と頑固なんですね」

「うっさい。私のベッド使わせてあげるんだから感謝してよね」

「貴女のベッド・・床で寝た方がまだマシです」

「なんですって?」

「馬鹿が移りそうです」

「・・・・」



これから大丈夫かな?





20120524
投稿日//20120628













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