まい・でぃあー 14
「フィーネさん、もしかして貴女知ってたんですか?」
「…何を」
「ふぁーすとさんがソロンの娘だって」
そうよね。知ってた知ってたわ。
「知ってた…。初めから」
「初めから?」
「知らないふりをしていたのは謝るわ。でも、…」
憎い気持ちは一緒でしょう?みんなには言うつもりなんてないけれど。そんな視線をみんなに向けた。このモフモフ族の予想外な登場でどよめいてる空気に私は目を伏せた。
「ポッポが言っていることは本当なんですか?」
「……。」
あくまで優しく聞いてくれるなんて。ううん、ジェイさんのこの優しさはきっとまだ真実かどうか分かっていない証拠。そうよ、…私に良くしてくれてる…私に惚れてるはずの彼なら嘘をついてしまえば。それにジェイさんの言葉は説得力があるからみんなにも納得のいくことを発言してくれるはず。
それなら出鱈目を言ってしまえば…。
「私…」
どうしちゃったの。どうして言葉が続かないの。嘘を並べるのなんて容易いことでしょう。折角ここまできたのよ、早く嘘を……うそ、を。
「黙ったままなら、…肯定とみますよ?」
「……。」
なんで?…彼にはもう嘘なんて。
「つけない…」
「フィーネさん?」
「だあもー!フィっちん何なの!?本当か嘘かどっちだってーの!」
「…本当よ」
私が認めた瞬間、ジェイさんは私の両肩を掴んできた。
「男が二人、って…フィーネさんの知り合いですか?」
「そうね…仲間だよ」
「フィーネさん…貴女はいったい、」
「そんなことよりあだなはどこなのっ?」
ジェイさんの言葉を遮ったノーマさんの質問に私は思わず笑ってしまう。言うはずがないでしょう?
「質問を変えましょう。…ふぁーすとさんをどうしようっていうんですか」
「そんなの…―」
決まってるじゃない。そう言えばジェイさんは目を見開いた。悟ったんだろう、私の肩から手を離して玄関の方へと向かって歩いていく。
「フィーネさん、いくら貴女でも… 。」
最後まで言い切ってみんな出て行ってしまった。最後当たりはよく聞こえなかったけど、…きっと……。
“許さない”って言ったんだろうな。
「ちょ、離せっての!」
「だめ。私が行ってくる」
「は?あんたあだなを引っ叩いてんじゃんっ、」
「だから、私が行くの」
やっときたチャンスだった。ソロンの娘を追って雨が降っていて……
「ちょっと待って」
「離してよ!」
バチャバチャと水溜りを踏みながら抵抗されて…
「ねえ、貴女の唯一の居場所は…お父様のところよね?」
「!」
「…教えてあげる。あなたのお父様が亡くなった場所」
仲間の二人が出てきて彼女を押さえて…
「この二人が連れて行ってくれるわよ?その場所に」
「っ…、いいもん!だから離してっ!…やっ!」
「いってらっしゃい。蜃気楼の宮殿へ…」
「やああ!ジェーイ!!!」
そしてダクトに乗り込んだ…
それがあの後の出来事。
ジェイジェイって…あの人の名前を呼ばないでよ。最後まで目障りな娘。
「ジェイさんは…、ジェイさんはアンタなんかに相応しくない」
いつからこんなに彼が大きくなってしまったんだろうか。皆がいなくなったこの場に座り込んで何故だか涙が溢れてしまった。
「ジェ、イさ、…ジェイさんっ…」
今だけ泣いてしまおう。そうすれば私も向かっていける。
だから…今だけ。
20140107
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