まい・でぃあー 09
「また来んね、師匠」
あちゃー、ついお墓に何時間も語っちゃった。
みんなの事もそうだけど最近じゃあだなの事ばっか話してるしな。
・・・・あ、そろそろあだな宿屋にもどってんかも。
帰ろうと墓地を出たところでギンギラ銀の頭が目に入った。
「セネセネじゃーん」
「ノーマか。墓参りか?」
「まぁね」
セネセネはそうかと相づちを打って、何かを思い出したように口を開く。
「そういえば、あいつ宿屋に入っていくの見たぞ」
「あいつぅー?」
あいつってだれさー。お客とか?いや待て待て、あたしは管理人じゃないよ。
誰だ誰だと頭を捻ってたらセネセネがため息混じりに、
「ふぁーすとだよ」
って言ってきた。
ため息混じりっておかしいよね?
名前も言わないであいつって言ったのセネセネじゃんか。
前に会わせたんだよね、セネセネ達に。
「何だかぼーっとしてたぞ。呼んだのに気付いていないみたいだった」
「ふーん」
変なことしたんじゃん?ってふざけてみたらセネセネはマジでキレちゃって否定してどっか行っちゃった。
あんなに怒んなくてもいいのにねー。
でも気づかなかったのかね?
宿屋に着いて料金の催促を涙目でしてくるおっちゃんはあとあと。無性にあだなが気になる・・。
あだなの扉の前に到着して扉が少し開いてるのに気づいて遠慮がちに(いや結構堂々と)入ってはあだなに話しかけた。
「あだなー?」
「・・・・・・・・」
セネセネの言う通り無反応だ。
何があったのかなと思いつつも、モグモグと何かを食べてるあだなに近づいた。
そしてそれを見て、少し嫌な予感・・というか、何というか・・。
「それ、今朝作ってたやつじゃん」
あだながジェージェーのために作った不格好なシチューを自分で食べてる。虚ろな目で。
予想はできた。悪い方だけど。ジェージェーは食べなかったんだと思う。
「美味しい・・と思うんだけどな」
「そっか」
「でもフィーネには敵わないや」
「・・・・・」
それは料理なのか恋心なのか解らないけど、乾いた笑いを溢したあだなは痛々しかった。
次の日になって、あだなは昨日とはうって変わってすごくはしゃいでる。
うん、何なのこの子。
「今日はノーマちゃんも行くの?」
「うん、まー暇だしね」
気になるしね。
ぴっちんも準備万全って感じだしあたしも気合い入れて大声でしゅっぱーつって言ったら大笑いしてた。
街を出てダクトに向かう途中、魔物が襲ってきた。何とか倒したものの少し疑問に思ってあだなに訊いてみる。
「あだなって戦わないよね」
「だって戦ったことないもん」
「でも前にポケットに入ってた、」
「あ、これ?」
そう、初めて宿屋に連れていったときに見た鋭いそれ。
「それ武器だよね?」
「うん、護身用の為にって死んだ父様が誕生日くださったの」
でもいまいち使い方が解らなくてって困ったように言ったあだなにちょっと癒されちゃったりして。
無事ダクトに乗って移動したらすぐ目の前。あだなは鼻歌混じりで歩いてる。
「今日は何も作ってないの?」
「うん。暫くは勉強しないとね」
それもそうだねー、なんて考えながらジェージェーの家に入っては各々寛ぎ出した。
・・あだなはジェージェーにベッタリだけどね。
「ノーマさん、でしたっけ」
「ん?ああそうだけど?」
このフィーネって子、どうも苦手だな。
にっこり笑って私の隣に座るや否や、ほら、また。この子は一瞬あだなを睨み付けるんだ。
けど、
「ふぁーすとさんってジェイさんの事、本当に好きなんですね」
「そだねー・・」
また笑顔になるから私の気のせいなのかもしんない。
20130118
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