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同居人とワタシ 09









「ジェイ君大変!」

「どうしたんです?」

「お母さんが帰ってくるっ」




朝ポストを見ると新聞と一通の手紙が入ってた。
中身を見たらお母さんからで、今度の土日帰るわよ。と書いてあった。

私は嬉しくて話すけれど、ジェイ君は冷たく、そうですか、の一言。
お母さんがジェイ君を引き取ってあげたのに、・・嫌なのかな。





「そんな言い方、・・冷たい」

「・・、すみません。ぼくは "お母さん"という存在に良い思い出がないので」

「へ?」

「今のは失言でした。忘れてください。貴女のお母さん、おかあさんさんにはとても感謝してます」




笑顔で言う彼はさっきと違って、冷たくなかった。

お母さん・・か、





「ジェイ君のお母さんって今何してるの?」

「・・さあ?」



それとなく訊いた質問に、これ以上聞くな、と言わんばかりの低い声。
そんなジェイ君に私は黙って口を閉じた。






土曜日になり、朝から家の前に一台のタクシーが止まっていた。
帰ってきたんだ、お母さんが。ずっと心細かったから、階段を跳ねる気持ちで駆け降り、玄関を開ける。





「あら、ふぁーすとーっ」




荷物を地面に置いて私を抱き締めるお母さんに、すごく安心した。

お母さんだ・・、って。





「会いたかったわっ。元気にしてた?」

「してたよっ、おかえりなさい!」

「ただいまっ」




そして玄関から出てきた居候君。




「ジェイ君っ、元気だった?」

「はい。色々ありがとう御座います」

「いいのいいの。ふぁーすともジェイ君とは仲良くやれてる?」

「一応ね。取り敢えず中に入らない?」



玄関先で屯していたことも忘れてたのか、あらそうね、って笑いながら荷物を持って玄関に向かう。

そういやジェイ君・・。





「髪ほどいてる」

「寝起きなんでね。ふぁーすとさんも寝癖がスゴいですよ?」

「へっ?」

「冗談です」




焦りながら髪を撫でていた私は、やられた、と騙された事に悔しくなる。

・・・いつか仕返ししてやる。






「ふぁ・・」




にしても眠い、時計を見るとまだ六時前だ。
お母さん、なんでこんな時間に帰ってきたんだろ。居間にみんな腰を下ろすけど眠くて座ってても体勢を保つのが危うい。

テーブル越しに向かい合うお母さんと、私の隣にいるジェイ君。





「あ、・・お茶いれようか」



しっかりしない意識の中、立ち上がろうとしたらジェイ君に阻まれた。
なぁに?とふわりとした気分でジェイ君を見る。





「ぼくがいれてきますよ。ふぁーすとさんは座っ、」

「ふふ、こう見ると中々イイ感じね」

「何がですか?」

「何だか同棲を始めた恋人みたい」




え・・同棲? 恋人?
お母さんの言葉を理解できず、私は朦朧とする。もうなんて言うか、半分夢の中・・って感じ。




「ぼくがふぁーすとさんと?有り得ませんよ」

「そー、だ・・よ・・・・」

「ふぁーすとさんっ?」




私はそのままジェイ君の方へ頭を傾けて、・・・・夢の世界へ旅立ちました。









「ふふ、寝てるんでしょ?」

「みたい、です」

「ジェイ君の肩、気持ち良いのかしらね」

「・・・・どうでしょう。横にしますね」

「ジェイ君、・・この子の事、宜しくね?前は頻繁に魘されたりしてたから。情緒不安定って言うの?でも高校に入ってからは治まってるみたいだけど」

「・・前、何かに怯えてました」

「ふぁーすとが?」

「部屋の隅で頭を抱えてガタガタと」

「そう、・・知りたい?」

「・・・・出来れば」







20121120






あきゅろす。
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